名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

名大祭6/5(日)について

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会は名大祭にて作家・書評家の先生をお招きして講演会を行います。
日時は6/5(日)の14:00〜15:30、会場は名古屋大学全学教育棟>S21C23となります。
そして会名は題して『プロに聞く! ミステリの読み方・作り方』!
お招きするのは名古屋でも多くの活動をなされている書評家の大矢博子先生と三重県出身のミステリ作家の水生大海先生のお二方です。

本講演会は読み手、書き手を代表するお二人に講演してもらい、読書及び創作を含めた書物の楽しみを広めることを目的としています。
具体的には豊富な経験と知識を持つプロの視点からミステリ作品を見つめて、お話をしていただく内容です。
また、講演会の最後に時間が空きましたら客席からの質疑応答も行う予定となっております(ただし、撮影及び録音はお控えいただけるようにお願いします)。
事前予約不要、入場料無料なので少しでも興味がおありの方は是非お越しくださいませ!

また、前座企画として13:00〜13:30に同会場にて『コンクリート・レボルティオと小説』と題した講演会を部員により行います。
昨年より放送されている昭和特撮ヒーローを題材とした歴史改変系SFアニメ『コンクリート・レボルティオ』を『完璧な夏の日』や<ドラキュラ戦記>など様々な歴史改変伝奇小説を例に挙げて解説していく予定です。
同じく事前予約不要、入場料無料なのでこちらもお立ち寄りくださいませ!



※編集(5月31日)
会場をS21教室と告知しておりましたが、正しくはC23教室となります。急な連絡になってしまったことをお詫びします。
当日はお間違えがないようS21、C23両教室前に部員が立ちご案内いたします。


 

2016年度新歓のお知らせ〔更新しました〕

部室見学について

「どのくらい本があるのか」「部室はどんな感じなのかなー」など、新入生の方々の疑問に応えるべく、部室見学の日を決めました。
3/26(土)と27(日)です。
大体昼前から18時位まで開いている予定ですので、お気軽にお越しください(事前連絡は不要です)。


「26・27は無理!」という方は、nagoya.u.sfa[at]gmail.comまでご希望の日時をご連絡下さい。

古本屋巡り

4/10㈰に午後二時から三時間ほど名古屋の新刊書店、古書店巡りを行います。
集合場所は部室です。
予定としては本山、千種、栄、上前津鶴舞、東別院を巡る感じです。
徒歩と電車で回りますが交通費はこちらで持ちます。
また事前予約などは不要なのでお気軽にご参加ください!

4月の新歓説明会日程

日付 教室番号 開始時間
4/12(火) c35 16:30〜
4/15(金) s15 18:15〜
4/18(月) c42 18:15〜
4/22(金) c23 16:30〜

以上の予定で行います。なにか不明な点がございましたらお気軽にご連絡ください。

新歓読書会

4月26日㈫に全学教育館c12で18:15から新歓読書会を行います。
読書会とは、「ある特定の小説を皆で読み、集まって感想を言い合ったり考察をしたりする」会のことです。
当サークルは週一の例会の時に毎回短篇読書会を行っておりメインの活動の一つとなっています。
そしてこの新歓読書会は新入部員あるいはサークルに興味がある皆様に読書会がどういったものなのかを実際に体験してもらおうという目的で開催する次第でございます。
題は『不思議の扉 時間がいっぱい』に収録されているスコット・フィッツジェラルド「ベンジャミンバトン」です。
課題本の『不思議の扉 時間がいっぱい』は部室に来て下さりサークル参加に興味を示していただいた人に無償配布を致しますのでお気軽にご参加ください。
新入部員の皆さまは他の新入生と知り合えるチャンスでもあります!

新歓用600字レビュー三本!『クローヴィス物語』『図書館大戦争』『百年の孤独』

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会では主な活動の一つとして作品の書評活動を行っています。
そこで書評・レビューとはいかなるものや? という新入生の皆さんの疑問に『図書館大戦争』『クローヴィス物語』『百年の孤独』三作品の600字レビューを掲載することでお答えしようと思います。
また、新入生歓迎用の会誌も配布していますので、そちらもお手に取って頂けると幸いです。

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『図書館大戦争』ミハイル・エリザーロフ 北川和美訳 河出書房新社
舞台は現代ロシア。その地には凡庸なソ連時代の作家グロノフが書いた数冊の本が存在した。彼の作品群はすでに忘れられて久しく、現存部数も少なくなっていたが、実は彼の作品を読むことによって人は特殊な力を得ることが出来るのである。その事に気づいた人々は集い、数少ない本を巡ってそれぞれ図書館と呼ばれる勢力を作りあげ、人知れぬロシアの暗部で凄惨な死闘を繰り広げるのだった。
 本作の魅力はなんといっても読書という行為の扱い方だ。読書というものは書を読み、そこから何かしらのモノを得る行為であるが、本作ではそれを拡大解釈して描いている。例えば「忍耐の書」を読めば、痛みを全く感じなくなる(ただし、体へのダメージは通常通り受ける)。また、本を読んだものは他の本を読みたくなり、本へ異常な執着を見せるようになる。このように本来知的行為である読書を薬物接種のような行為として描く点は興味深く、ある意味で的を得ているのかもしれないとクスリともする。また、本を手にするために結成された図書館同士の闘い方もおもしろい。本を傷つけてはいけないため火器厳禁であり、ロシア人達はお手製の武器で殺しあう。時代錯誤で滑稽とも言えるが、直に手をかけて殺す分その残酷さは増している。
 最後に、どこかで聞いたようなタイトルだが別にパクリというわけではない。イカれた現代ロシア文学、その最先端を味わいたい酔狂な御仁には是非とも手にとっていただきたい。
(烏猪)



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『クローヴィス物語』サキ 和爾桃子訳 白水uブックス・永遠の本棚
 ねえ、そこの君、意地悪な話は好きかい? おお、好きなのかい! じゃあ、そんなひねくれた君にとっておきの作品を紹介してあげよう。それはこいつ、サキ作『クローヴィス物語』さ! ではまず、作者であるサキの紹介から行こうか。サキっていうのはイギリス人で今からちょうど百年前に戦争でおっちんじまった作家さ。で、そのサキなんだが、チクリと棘のあるブラックユーモアを交えて短編小説を書くのが好きなひねくれた人間だったんだ。そして、本作は彼の毒に満ちた短篇集というわけよ。
こん中には、人語を解するようになったネコがペラペラと人々の秘め事を喋りだし人間関係をぶち壊す話とか、イタチの神様が意地悪な女を懲らしめる話とか、臆病で弱弱しいガキがイースター祭りで突如豹変して荒ぶる話とか、そんな不思議で正しくひねくれてるけども、すかっとする話がたっぷり詰まってる。ジャンル的にはSFにもミステリーにも幻想小説にもきちんと分類できない『奇妙な味』ってやつになるんだが、んなことはどうでもいい(詳しいことは部員に聞いてくれ、それで答えれねぇやつはモグリだ!)。とにかく研ぎ澄まされたナイフのように、鋭い切れ味の持ったブラックユーモアを堪能したいんだったら読むといい。意地悪な話が好きじゃない高潔無比で清廉潔白なお方も没後百周年なんだし読んで見てもいいんじゃないか? 絶対損はさせないさ。(亜鉛中毒者)


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百年の孤独ガルシア・マルケス 鼓直訳 新潮社
百年の孤独』それはラテンアメリカより生まれたノーベル文学賞受賞者であるガルシア・マルケスの代表作であり、あまりにも力強く重厚で、そして壮絶な物語の名である。
 百年を通し、マコンドという村と、そこに居住するブエンディア一族の趨勢が一つ一つじっくりと物語られる。その膨大で多岐にわたる話を個々に摘み出すことは出来ない。何故なら全てが繋がっているからだ。しかし、それはこの物語が一つ一つ読み解かなければならないような複雑怪奇な物であることを意味してはいない。むしろ圧倒的な描写力に創られた物語はほんの一部読むだけで読者の意識をその世界に引きこむ。そして全てが繋がっている故に人々はどんとんと読み進めていくことになる。
 また、本作を彩っているものに魔術がある。それはファンタジー作品で見られる特殊な技能としての魔術ではなく、もっと平凡な現象として存在する。ジプシーが伝える妖しい秘術に漂う幽霊、そして一族の未来にまつわる予言、それらがあたかも空気のごとく当たり前に世界へ溶け込んでいるものとして描かれる。この表現方法は読者に今まで感じたことのない不思議な感覚を与える。
 この書を読むと大変疲れる。しかし、それは途方もない情報量と緻密な描写力、そして奔放な物語を味わえることの紛れもない裏返しだ。これは一つの世界を完全に孕んだ物語なのである。(文々)

パオロ・バチガルピ『神の水』

超水不足の未来。分裂寸前に陥ったアメリカでは、水利権を巡って州同士が争ったり、ときに州軍を動員して小競り合いを起こしたり、工作員を使って地上げ(水上げ?)したりしているわけですね。『神の水』の舞台は、そういうお先真っ暗な感じの未来アメリカです。『ねじまき少女』はバイオ産業でぐちゃぐちゃになったタイが舞台だったし、バチガルピの書くのって暗い状況ばっかりだすな!
主人公となるのは州の工作員、女性ジャーナリスト、たくましく生き抜く貧困層の少女の三人。職も出自も異なる彼らが水利権を揺るがす大事件に巻き込まれていく、『神の水』とはそういうお話です。ストーリーラインの融合のさせ方、間のもたせ方などが非常にうまく、ページめくらせ力がかなり高い作品でした。
個人的には「『フォールアウト9』が超売れた」という小ネタがツボでした。4出たばっかじゃん! つーか水不足な状況っつーのに核戦争後が舞台のゲームで遊ぶなや! 戦わなきゃ現実と!
(やまもり)

京都SFフェスティバル2015レポートその2

11/12(土)から11/13(日)にかけて行われた京都SFフェスティバルに現役部員3人で行ってきましたので、詠君に引き続き、今更ながらそれについてのレポートでもつらつらと書いていこうかと思います。

言い出しっぺなので色々説明します。
例年だと、メモを取っていた一人が各企画についてまとめて1本のレポートを書き上げる、というような形式をとっていました。けれど、詠君も言っていたように、今年は役割分担をしてメモを取ったので、いっそのことレポートも各人がメモを取った本会企画とか参加した合宿企画とかを思い思いに語って、それぞれのレポートを読んでいくと何となく全体像がつかめるといった感じのリレー形式もアリなんじゃね? 面白いんじゃね? というふうに思ったので、そういう形式を先輩権限で採用することにしました。まあ、ただ単に三人そろってなんかメモの内容を確認し合ってすり合わせとかをするのがひどくめんどくさく思えたので別にそれぞれに記事書いてけばいいじゃんとかそう思っただけの話に過ぎないんですけども。
それではレポートを始めていきます。

やくしまるえつこ×円城塔 朗読小説『タンパク質みたいに』

・機械に助けてもらって小説を書こう、機械文芸部

円城塔さんによる本会企画その2。『シャッフル航法』収録の「シャッフル航法」、「φ」、それから今年の京フェスのために書き下ろされた最新作、「タンパク質みたいに」はコンピュータによるプログラミングを用いて執筆したものということなので、どのようなプログラムを用いてどのように作品を執筆していったのかが語られました。それとともに、相対性理論やくしまるえつこさんによる『タンパク質みたいに』の朗読音源が初お披露目されるという豪華2本立て。
そもそも今回の執筆依頼を受けた時点で、書き下ろされた作品がやくしまるえつこさんによって朗読されることが決まっていたということに何より驚いた円城さん。聞いてるこっちが一番驚きました。本人は、僕とは全く関係ないから企画の意味がわからなかった的なことを言ってましたが、あれじゃないですかね、スペースダンディ的なつながりとかを京大さんに意識されたんじゃないんですかね。知らないけど。
そうして執筆を開始した円城さん。最初に抱いた目的は、「読みにくいものを作ってやるぞ!」ということだったようです。そんなこんなで出来上がったのが、ジオメトリ処理によってトーラスを形成して(執筆者的にこの辺の表現は?しか浮かんでいないので間違っていても悪しからず)、タンパク質的にテキストを8の字に複数走らせた作品でありました。
会場で配られたテキストとかを画像としてあげれば一番わかりやすいんですけど、著作権の問題とかが怖いのでとりあえずやめておきます。
で、肝心のやくしまるさんの朗読ですが、それはもうすごかったのです。あの独特のウィスパーヴォイスでもって、紙面上ではトーラス状にいくつも走らされている複数のテキストが重ね合わされるように読み上げられていくのです。テキストが重奏しているのです。そんでもって作品は「わたし」とか「あなた」という表現からなる自己言及的なものでしたので、それはもう自意識の迷宮にでも迷い込んだかのようだったのです(錯乱)。
今回のやくしまるさんの音源について、当日会場にいた編集を担当した方からは、ブレスをなくして機械音声的に聞こえるよう演出が試みられている、ということなどが制作の裏話として語られました。
そして円城さんの話に戻るわけなのですが、この音源を聴いたのは今日が初めてだったというご本人。どうにもいろいろ衝撃的だったご様子で、始終会場の前の方を落ち着きなくウロウロしながら、タオルで幾度も汗を拭いてらっしゃいました。晩秋なのに。半袖だったのに。それから、「φ」を執筆してた時はクワイン小説を考えていたということだとか、カオスとかシャッフルを用いて書いた詩を現代詩手帖に寄稿した話とか、興味深そうな話が次から次へ展開されてはいたのですが、プログラミング、というか理系分野、パソコン関係に対して門外漢な僕にとっては何を言っているのか全くわからない話でした。レポできません。本当にすみません。僕はただやくしまるえつこさんの朗読すげーとか言って惚けてるだけでした。まあ、隣のやつも「これは催眠音源だ!」とか言って途中で寝落ちてたので、あんま理解はしてないだろうな、とは思いますけれども。
ただ、円城さんの結論は、プログラミングなんかに頼るよりも普通に小説書いた方がよっぽど楽、ということのようです。3回くらい言っていたのでそれだけは間違いなさそうです。
円城さん曰く、この企画で使ったスライドは後でネットにあげるからスライドちゃんと見たい人はそれを見て(2015年12月12日現在未確認)、とのことでした。わかる人はそれ見たらわかるから、ということだそうです。もしその辺のプログラミング関係のことが気になる方は、円城先生があげてくれるというスライド見て理解してもらえると幸いです。
それと、やくしまるえつこさんによる『タンパク質みたいに』の朗読音源も、「みらいレコーズオフィシャル・サイト等でハイレゾ配信することも予定されている」そうです。楽しみに待ちましょう。(http://skream.jp/news/2015/11/yakushimaru_kyoto-sf-fes.php

合宿企画

・ディーラーズ

クトゥルフ会報とか異色作家会報を持って行きました。クトゥルフ会報をそこそこ買っていただけたのでクトゥルフってやっぱつえーんだなーと思った次第であります。お買い求めくださった皆様、ありがとうございました。
個人的には京大さんの舞城会報を購入しました。『阿修羅ガール』のレビューとかが面白くて、久しぶりに舞城読むか、って気に少しなりました。

・若者部屋

一コマ目は例年通り若者部屋に行ってました。今年は大学生がうちと京大さんくらいしかいなかったのでこじんまりとしたものでしたが、割と楽しくお話しすることができました。ありがとうございました。それは次のコマでやるんだって話なのに劇場版ハーモニーの愚痴がほんのちょっとみんなから漏れ出てたのはいい思い出。白石の話して京大の人を半分くらいいなくならせたうちの後輩はマジ反省しろ。

・御冷ミァハの大嘘、あるいは伊藤計劃「ハーモニー」読書会

二コマ目は、「名古屋SFシンポジウム2015レポート」のコマそっちのけでこっちに参加してました。京大SF研OBのMAKKIさんによるハーモニー部屋。MAKKIさんの、ハーモニーのLINEスタンプを買ってしまったはいいけれどクソすぎて殺意がわいたという話から、あの伝説のコミック百合姫版ハーモニーはどこへいってしまったのん? という話まで。大変面白かったです。真面目な話だと、世界にwatchmeをインストールしてない民族はそもそもいるわけだし、何よりwatchmeって15歳になるまで作用しないわけだから全人類が意識を失うっていうのは違うよね、って話とか、信頼できない語り手の話とか。一番印象に残っているのは、映画では完全にガチ百合化してたわけだけども、あれって少女小説的な関係性がそもそもにあって、その関係性っていうのは依存から自立へ至るまでの少女たちの、まさに作中にある通りの「同志」としての関係を描くものであるわけなんだけど、それを「百合」というもので置き換えて表現していいの?っていう話ですかね。
その他、映像化に際してのわかりやすいエンタメ要素の付加として、今回は百合があったわけだけれども、『屍者の帝国』映画版のあのワトソンとフライデーの友人関係にしても、原作において事態に巻き込まれるだけで決して主体的に動いてはいないワトソンを、主人公として主体的に動かすための改変だったんだろうね、という話とか。
個人的には、建築学科の人間としてハーモニーの都市描写とかは色々気になる部分がありまして、僕はまだ再読(熟読)できてなくて確認できてないんですけども、原作は真っ白いオフィスビル状の建物の立ち並ぶコルビュジェの輝く都市的都市像だったようなのですが、映像化に際して何故あんなフォスターのガーキン的というか、伊東豊雄とかを思い起こさせるような柔らかい有機的デザインになってたの?っていう話ですよね。今回のハーモニーの未来都市像は、アニメータさんとかが単独でつくりあげたものではなくて、東大教授も務めた内藤廣という現代日本の一級の建築家が原案協力として入っているわけで、一建築学生として考察したい部分は色々とあるのですね。現代日本建築の最前線にああいう有機的デザインを持ち味とする建築家が多数いるのは間違いないですが、内藤廣はそういうデザインを特徴とする建築家ではなく、見事な頭のキレによってその与件、その敷地に応ずる、本人呼ぶところの「素形」や「素景」といった、溶け込むような造形をつくりだす建築家なので、ハーモニーの一体どこに呼応してあのデザインを呼び起こしたのかは大変気になるところではあります。あれかな、子どもを守るためにグニャってなるジャングルジムのあたりからなのかな。
原案協力に何故内藤さんが入っているのかは、なんか東大時代の教え子にアニメータになった人がいて、その人から頼まれたから、だそうです(名大での講演会での本人談より)。
途中から自語りに変わってしまいましたが、コマ自体は、色々文句を言いたい部分はあるけれど、都市の描写等々あの作品がビジュアル化されたということには割と意味はあったんじゃないか、ということで話はまとまりました。

・京都・深夜の創作談義 虎の穴編

三コマ目は創作部屋に行ってきました。京大SF研の現役回生・OBの作品を、大森望さんと東京創元社小浜徹也さん他評論家や編集者の方々が講評する企画。
その時講評された作品はこちら。
・東山花鏡『アイリス・フランセスカの巡礼』
・夏目之猫『雲の上には』
・空舟千帆『発火』
・呉衣悠介『21センチュリー・ニュー・プロジェクト・フィラデルフィア
・栗山陸『猫と仮面のゲーム』
京都SFフェスティバル2015のwebサイトから読めるようになっているので是非。http://kyofes.kusfa.jp/cgibin/Kyo_fes/wiki.cgi?page=%B9%E7%BD%C9%A4%CB%A4%C4%A4%A4%A4%C6#p11 )
なんでも、『アイリス・フランセスカの巡礼』執筆者の東山花鏡さんがゲンロンで大森望さんに原稿を読んでもらうことをお願いしたのが企画の発端なんだとか。 
執筆者さん、講評者さんともに多種多様なところが大変面白かったです。東山さんが熱く自作への思いを語れば、呉さんが、「あの、これ艦これトリビュートに出したやつなんですけど……」と言ってちょっと申し訳なさそうに説明をする。「どうやって講評されたいの? ただの趣味のものとしてなのか、売れるもの売れないものという視点なのか?」という言葉で辛口講評の口火が切られたかと思えば、どこか愛を感じさせるような口ぶりで執筆者に激励の言葉が送られている。でも小浜さんの、「俺パロディダメなんだよ」的な言葉は、全然そんな雰囲気ではなかったのですが思わず笑いそうになってしまいました。
講評者さんたちの方もそれぞれでお好きな作品が違っていて、そのために講評者同士で意見を戦わせるなんて場面もしばしば見られました。
一番印象に残ったのは、「読者を育てなきゃいけないよ」という言葉。印象に残った割にあんまどんな文脈で語られた言葉なのかを覚えていないのですが、要は友人のものを読むとき友人だからといって作者の気持ちを汲んであげてはいけないよ、ということも含まれてる話。でもその言葉を聞いて、ちゃんとした読者でいよう、と思わず襟を正したくなったことは覚えています。割と深夜付近だったので眠かったのですね。
あと何が驚いたって執筆者の中に十代の人がいたことですよ。自分も数年前までは十代だったはずなのに、なんなんでしょうね、このすんごく遠いもののように感じられる気持ちは。

・三コマ目以降

三コマ目が終わってから朝までは適当に麻雀とかボドゲとかして例年通り夜を明かそうかな、と思っていたのですが、麻雀部屋にいったら卓が空いておらず、待ってる間仮眠でもするか、と思って寝て起きたら朝、っていう感じでしたまる。


僕の分のレポートはだいたいこんなもんですかね。個人的には全体を通してやっぱりいつも通りの面白さだったので、来年もぜひ参加したいと思っております。
今回一番印象深かったことは、はじめてちゃんと「寝た」ことですかね。参加した去年、一昨年といつも本ラノの選考会上に乗り込んで、終わったらそのままボドゲとかして徹夜していたので。そんなだから朝はだいたいゾンビのような体で閉会の挨拶とかを聞くことになって、記憶がほとんどなくなってるわけだったのですが、今年はバッチリ7時間睡眠をキメてスッキリの状態で見事閉会を迎えられたわけであります。ハイ。はじめてちゃんと閉会の挨拶とかを聞いた気がします。
朝起きたら隣に大森望先生らしき人が寝ていて、何が何だかよくわからない顔をしてしまったというのはまた別の話。
今年は本ラノなかったのですのよね、担当者の方とかがいなくなってしまったのかしら。やってたら参加してた企画ではあったので、ちょっと気になるところではあります。

今年は合宿において当SF研OBの片桐翔造さん主導で、「名古屋SFシンポジウム2015レポート」の企画や、ブラックユーモアな作風で知られ、オー・ヘンリーと並び称される短編の名手、サキを語る「サキの部屋」が催されたりしたのですが、ぶっちぎって他の企画に参加していた私です。でも、その辺の企画にはきちんと後輩君たちが顔を出してくれていたのでホッとしております。ありがとね、後輩君たち。

つらつらと拙い文を書き連ねてしまいましたが、いい加減終わりにしようと思います。ここまで読んでくださりありがとうございました。
最後に、京大SF・幻想文学研究会の皆様、企画の運営、本当にお疲れさまでした。楽しいイベントをありがとうございました。また来年もぜひ参加させていただきたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願いします。

以上。後輩君、あとはまかせた。(もりぃ)

京都SFフェスティバルレポその1

11/21・22に京都で開催された京都SFフェスティバルに我々名大SF研から数名参加したのでレポを書いていこうと思います(遅くなってしまいましたが……)。
ただ、3人で4つある本会企画を分担してレポをとっていたので、各人が自分の担当した本会企画と参加した合宿企画のレポを別々に書くことになりました。
私が記録した本会企画は四コマ目の「ウラジーミル・ソローキンの世界」です。
合宿企画は「若者部屋」「名古屋SFシンポジウム部屋」「サキの部屋」に参加しました。

・本会企画1コマ目「ウラジーミル・ソローキンの世界」
『ロマン』『青い脂』など発表し現代ロシア文学を牽引する作家ウラジーミル・ソローキン。本年〈氷三部作〉の邦訳刊行開始され、日本でも人気を博するソローキンの魅力をソローキン作品の翻訳者である松下隆志氏と翻訳家、評論家である柳下毅一郎氏が語られました。
現代ロシアでは小説は日本では純文学にあたる芸術文学と娯楽小説にきっぱりと棲み分けがなされていることや、SF的なアイデアを多用するソローキンは自身をSF作家とはみなしていないこと、旧来の『ロマン』『青い脂』などのソローキン作品は文体模写などを多用し既存のものを壊していくスタイルで、『氷』以後のソローキン作品は一貫したストーリーがあり、そのスタイルは自分で組み立てたものを自分自身で壊すというものに変化し、ロシア国内でも大きな反響をよんだということ、ソローキン作品に頻出する中国モチーフの意味についての話し、ソローキン作品で描かれるソビエト史とドイツとの関係性からトルストイがナポレオンの登場でロシア帝国が出来たと描いたというように、ソビエトナチスドイツとの関わり合いにより形作られ、ドイツへの気持ち悪いが惹かれるというソローキンの思いが読み取れること、現在刊行中の〈氷三部作〉の全体像や早稲田文学で連載中の『テルリヤ』の内容の紹介、ソローキンの影響を受けた作家が現れて邦訳も始まっていることなど興味深い話を沢山聞かせていただきました。
中でも面白いとおもったのが、ドフトエフスキー、トルストイなど偉大な作家を有する古典ロシア文学とソローキンなどの現代ロシア文学の間のソ連文学は殆ど邦訳されておらず、今後ロシア文学研究では古典ロシア文学と現代ロシア文学の間だけではなくソ連文学との関係性をも考えていかなけらばならないという話と、SFという本命を掲げてある種の社会批判ができたソビエトSFにはソローキン作品との連続性が存在するという話です。これからの日本における豊かな露文研究に期待したいと思いました。
また、会場に設置されたプロジェクターにはソローキンのインタビュー映像や、『テルリヤ』を再現するイベントでソローキン本人が中世人のようなコスプレをし、裸の女の人たちに囲まれて楽しそうにしている画像が映され、ソローキンの意外な一面を見ることも出来ました。

・合宿企画
旅館さわや本店で行われた合宿企画。
1コマ目は「若者部屋」私は行き、他のSF研の方々と親睦を深めに行きました。ただ、学祭と被っていたためか若者部屋にいたのは名大SF研と京大SF研しかいなかったのは少し残念でしたが、その分より親睦を深めれたと思います。外部の人たちと作家や本の話を色々とするのは大変楽しいですね。最後の方、白石晃士の話をしていたのですが気付くと京大SF研の人が半分程いなくなっていました。

2コマ目は「名古屋SFシンポジウム2015レポート」に行きました。というのも、名古屋SFシンポジウムは名大SF研も関わっているからです。シンポジウムの内容をざらっと説明し、今後の方向性を参加者の方々と話し合った結果「女子大で開催されているのにも関わらず女子大生が少ないので、もっと女子大生を呼ぼう」という非常に有意義な答えがでました。

3コマ目は企画者の一人として「サキの部屋」にいきました(まぁ私は殆どなにもしていないのですが)。サキというのは今年没後99年のイギリス人で、オーヘンリーとならぶ短編の名手として知られ、その冴えわたるブラックユーモアが大きな魅力である作家です。今年は現時点で4冊ほどサキの作品集が日本で刊行され、地味ながらブームというものが来ていると思われたため、この企画をたてた次第です。この会では参加者の皆さんとサキの魅力を語りあい、あるいは伝えあいました。サキとか絶対性格悪いし友達になりたくないよ、とかサキはいわば古典と分類されるので手を出しにくいのでは、とか今年サキ作品集が沢山刊行されたので来年没後100年を迎える際に気楽に手に取れるようになったのでは、などという話で盛り上がりました。参加してくださった皆様ありがとうございました。

4コマ目以降は「麻雀部屋デレステ部屋」と「ボードゲーム部屋」でゴロゴロしながら夜を明かしました。

今年は例年より一か月遅い開催で多少心配しましたが、そのような心配は杞憂で、様々な企画を通し非常に刺激的で楽しい時間を過ごさせていただきました。 (詠)

二千十五年前半創作短編会誌完成しました!

部内でひそかに行われてきた創作短編会。そこで挙がった原稿をまとめて会誌「二千十五年前半創作短編会誌」にしました。
本会誌に収録されているの3/31行われた第5回、7/1に行われた第6回、9/1に行われた第7回の創作短編会です。
またそれぞれテーマが決まっており、5……性淘汰、6……窓・工場、7……出だしを「それ翼竜であった」で始める
というものになっております。

それらをまとめた本会誌はp52で一冊200円となっております。
11/21,22の京都SFフェスティバル、11/23の文学フリマ、12/31のコミックマーケット89で販売しますので手に取って頂けたら幸いです。

また、11/1に行われたハロウィン短編会、12月中旬に行う予定のクリスマス短編会の原稿をまとめた「二千十五年後半創作短編会誌」を冬コミまでに制作する予定です。
乞うご期待!