名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

ラヴクラフト全集1(H.P.ラヴクラフト)

ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))

ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))

僕のラヴクラフトデビュー作。4つの短編を収録。
これ短編?となる深い作品が多かった。
「インマウスの影」
恐ろしい秘密の眠る町インマウスとその秘密を探る男の話。
主人公が過去を振り返る形式でとなっており、読む人は主人公と同じ視点となるため不安な気持ちや緊張感がリアルに伝わってくる。話の中心となるインマウスの町の描写は不気味すぎて気持ち悪くなるほど。
オチも僕の想像を超えたものでとても驚いた。
FFで例えるとXみたいな形式の話。「第四間氷期」を思い出したのは僕だけじゃないはず。
「壁のなかの鼠」
血なまぐさい歴史を持つ家系デラポーア家にまつわる話。
正直あまりわからなかった。というか想像できなかった。デラポーア家の血を受け継ぐ主人公がイグザム修道院に隠された秘密を見たときの風景や情景がどうも思い浮かばなかった。その後の展開に置いていかれてしまった。
でもこれだけは言える、「黒んぼ(主人公の飼っている猫)」はかわいい、と。
「死体安置所にて」
ある葬儀屋の体験した奇妙な出来事の話。
前の2編とは全く違ってまさに短編だった。地味な短編である。
読者がこの話から学ぶべき教訓は、死体は大事にしろ、ということだろう。
「闇に囁くもの」
ヴァーモント州の洪水後、川で発見された奇妙なもの。それの正体を新聞で討論していた主人公ウィルマートにある時、エイクリーという人物から手紙が来た。手紙の中で彼は、あの奇妙なものは地球の外から来たものだ、私は証拠も持っている、と言った・・・・みたいな話。
はじめの方はウィルマートとエイクリーの手紙のやり取りがメインだが、一度読み終えてみるとこの時にも見えないところで話は進んでいたんだなと思う。とにかく専門用語が多く、頭が混乱しそうになった。
終盤はなんだかSFチックな話になってきていろんな装置が出てきたのでちょっと興奮した。
何が起こったのかすべてが書かれているわけではないので読者の想像に任せるところがあり解釈が分かれそうだな、とあとがきに書いてあった。(ワタナベ)