名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

ラヴクラフト全集2

ラヴクラフト全集 (2) (創元推理文庫 (523‐2))

ラヴクラフト全集 (2) (創元推理文庫 (523‐2))

ラヴクラフトの全作品=クトゥルフ神話だと思っていたら違った。前期はホラーテイストの作品で、後期の作品群がクトゥルフ神話として大成したようだ。
この全集では三編の作品が収録されている。

クトゥルフの呼び声

父の遺した不気味な薄肉浮彫りから始まる、想像を絶した物語。よく言われる「クトゥルフ神話」の出発点となった有名な話らしい。
わずか50ページほどの話なのに濃い内容だった。まだラヴクラフト歴は短いけど、日記や資料を主人公が読んでいくというスタイルがこの人の得意なスタイルなのかなぁと思う。いままで読んだラヴクラフト作品で一番迫力があった。実際に怪物が出てくることなんてないと思ってた。

エーリッヒ・ツァンの音楽

不思議な町オーゼイユ街で起こった不思議な出来事を描いた作品。
超短編。なんか不思議だなぁぐらいの感想しか抱けなかった。想像力足りないかな?

チャールズ・ウォードの奇怪な事件

初めて読んだラヴクラフトの長編。チャールズ・ウォードという青年がいかにして発狂してしまったか、そして一人の青年の発狂の裏にひそんだ衝撃の事実を描いた作品。アメリカのプロヴィデンスが舞台。景色などの描写が美しい。
はじめのボレルスの言葉がじわじわくるのがなんだか心地いい。クトゥルフ神話とは違った良さのある作品だった。個人的にすごく好きな話。なんだか錬金術とかもテーマになってる気がする。実際におぞましい行為をしている場面がないのが逆に怖いという、仄めかす描写が作品全体に渦巻く狂気にすごくマッチしてると思う。
(ワタナベ)