- 作者: 最相葉月
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/03/26
- メディア: 文庫
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個人的に作家の評伝というか伝記はだめだと思う。才能のある人物だと明らかに若いころの輝きがなくなっていっているのが見えてしまうのが、悲しいというのがその理由である。星新一が初め持っていた持っていたものが質より量を求められることによってなくなっていってしまうのを見るのはつらい。星新一は父親の会社関連で苦労しすぎている。重役の裏切りとか裁判とかによって誰にも言えない人間関係についてのドロドロとした感情があったのだろう。だからこそ文章では人間味のない無機物的ともいえるものが書けたのだろう。あと個人的に寸評をよむと星新一は鼻にかかる物言いをする嫌な奴な印象だったが、元々は飄々としたような性格でブラックジョークというかキレのあるジョークをする人だというのを知って驚いた。文学界からの不当な評価などで性格が歪んでいっているように見えたので、そういうのを見るのも悲しかった。
星新一という人物を知るためには非常に参考になると思う。しかし個人的には文章が読みづらいというか、なにかが足りないような気がした。そこを差し引いても良い本だと思うし、自分の中で勝手に出来上がっていた星新一像をぶち壊すには十分な本だった。(toshi)