名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

青年のための読書クラブ(桜庭一樹)

青年のための読書クラブ (新潮文庫)

青年のための読書クラブ (新潮文庫)

読みたいとは思っていながらもハード版には手を出しづらかったりゴタゴタしたのでようやく。新入生歓迎ビラにタイトルだけもらったりはしてましたが。
女子校の片隅でひっそりと生きる本好きのクリーチャーたちが、自らが見聞きした学園の裏歴史をまとめた部ノート、という形で100年にわたる学園の隆盛を描いた連作短編。
少女たちが追い求める、少女たちの中にしか存在しないうつくしい男性性(someone)を描いてみたり、引用作品の筋に沿った展開をしてみたり、そこからさらにメタ的に、部誌の編者であるところの作者の所業について言及したり、いろいろと楽しくて楽しかった(笑)
完全なる日陰者であるところの、愛すべき読書クラブ員たちのキャラクター小説だとおもってもいいし、仮想学園モノへのアンチテーゼ、百合、文学トリビュート小説、ファンタジー、どんな読み方をしてもそれなりに面白いのではないだろうか。とりあえず「私は歴史の表舞台に立つような人間ではない、と言いつつも表舞台の人間に鬱屈とした感情を持ち続けている」ような本好きには全力でオススメ(ニッコリ)    (つの)