名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

沈黙のフライバイ(野尻抱介)

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)

ハードSFの短編集。「SFが読みたい!」2008年版国内第三位。

本書には五編の短編が収録されており、どれも現在の宇宙開発の延長線上の世界を描いたものになっています。変に話が過熱したり、無茶をしないところが非常にいいです。宇宙人が攻めてきたり、ぶっとんだ未来を描いたりはしていません。現在の状況と作者の世界がしっかり繋がっており、それ故に安定感とリアリティーを感じます。収録作品の一つ「大風呂敷と蜘蛛の糸」という作品は大学の研究室が舞台になっているだけに、妙な親近感を覚えました。なんだかこんな展開ありそう。そんな身近な世界から宇宙や大気圏という壮大な物語に繋がっていきます。非常に良質な作品が詰め込まれた一冊だと思います。

カーボン・ナノチューブを使った軌道エレベーターの話って一応現実にあるみたいですね。SFの世界だけの話しかと思ってました。(三笠)