名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

イレブンソウル(戸土野正内郎)

イレブンソウル 1 (BLADE COMICS)

イレブンソウル 1 (BLADE COMICS)

悪魔狩り」が有名なトドタンの作品です。

21世紀中盤、自らの欠点を他の遺伝子を取り込むことによって補完する「発展型成長遺伝子」の実験サンプルをバイオハザードしてしまった人類は、初めて自らより強力な「種」たる「シャヘル」と対峙することになった。自然界から無制限に遺伝子を取り込み、人類の予想を遥かに超えて進化したシャヘルはわずか2年で南北アメリカ大陸を制圧。アメリカ合衆国は世界地図から消えた。その年、日本は「軍」を再編。強化手術によって諸神経の高速化を図った兵士を、外骨格兵装に搭乗させる機甲歩兵部隊―「侍」部隊がその要となる。侍を育成、運用する首相直属の統括局は「侍所」と呼ばれ、わずか数年で世界一級の兵士達を輩出した。侍は各国のベースキャンプに派遣され、対シャヘルの戦闘において目覚しい戦果を上げた。人類とシャヘルは大海を挟んでにらみ合い、侵略と防衛を繰り返す長期戦に突入。世界各国は莫大な資金を投じて軍備を強化し始める。

最早「暴力」を除いて、事態の解決を図れるものはなくなっていた…。

長くなりましたが、あらすじはこんな感じです。というか、こんな短い文章で本当は語ることができない作品なんです。なぜなら、悪魔狩りも含め、彼の作品は設定が非常に細かいからです。作るだけ作って、作者の頭の中のみに留まって、作中で全く説明がなされない用語もざらです。また、ストーリー自体も壮大です。よって、「わかりにくい」という評が多いですが、それでも読み込むとなかなか奥が深い。設定大好き人間にはたまらない感じの作風です。

そして、設定に比例して絵もディテールがいちいち細かいです。アクションシーンも迫力がある。想像を絶する作業量です。それをアシスタントを雇わず1人でやっているというから凄まじい。気が遠くなります。もっとも、締め切り破りの常習犯は免れないみたいですが。

また、この作品に関しては、細かいストーリーやラストは連載開始前に全て決めてしまったそうです。それでも作者によれば、「悪魔狩りなんて可愛い方だった」そうです。壮大な悪魔狩りのストーリーを更に超えてくれるようで。(作者は腕の限界を超えてくれるようで)

現在もマッグガーデンの「コミックBLADE」で連載中。非常に先が楽しみな作品です。(坪田)