- 作者: 畠中恵
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/11/26
- メディア: 文庫
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一つ目はいきなりSFではありません。
本書は江戸を舞台にした大店の若だんなと妖怪たちのファンタジーミステリ「しゃばけ」シリーズの第二巻である。今回は短編集となっており、前作に比べるとミステリ要素が強くなっている。六篇の内三篇の話の紹介と感想を簡単に書いていく。
「栄吉の菓子」:栄吉の菓子を食べたご隠居が死んでしまう話。この隠居の性格は非常に悪く、全体的に栄吉が可哀想な目にあっている。この話あたりからやけに石見銀山ネズミ捕りという単語が出てくるが特に意味はないようである。
「空のビードロ」:松之助の視点で語りつつ、前作の終わりからつながっていく話。前作で若だんなたちが下手人を捕まえようと奔走する裏で苦労していた松之助だが、最終的には長崎屋で働けるようになって松之助兄さんよかったねという感じ。
「虹を見し事」:いつもと違う手代たちなどに疑問を持ち原因を探る若だんなの話。読んでいてパラレルワールドか「もやしもん」のような展開、はたまたタイトル通りのことかと思えばラストはすこししんみりさせられる。
このシリーズの魅力は言うまでもなく、作中で描かれる江戸の雰囲気と病弱な若だんなを助ける妖怪たちである。若だんなのまわりの妖怪の中では私は屏風のぞきが特にお気に入りであり、今作では好きな妖怪である濡女が出てくるので嬉しい限りである。さらにそれに加えて大店の跡取りとして生まれ、親や手代たちに大福を砂糖漬けにしたかのように甘やかされつつも、それに甘えずに頼られる大人になりたいと願っている若だんなも魅力の一つである。この先若だんながどのように成長していくかが楽しみである。(toshi)