名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

美濃牛

美濃牛 (講談社ノベルス)

美濃牛 (講談社ノベルス)

殊能将之二作目。表紙を見るとわかるんだけれど、「MINOTAUR」つまりミノタウロスで、要は駄洒落である。思わず笑ってしまった。
前作とは打って変わって、王道を通り越して陳腐とも思えるミステリ的状況である。妙に雑学の豊富な変人の探偵、陸の孤島、資産家の家族、美しくも妖しい雰囲気の女の子、そしてわらべ唄になぞらえた数々の猟奇殺人。もちろん確信犯である。このように話自体もそうだと言えるのだが、この本にはオマージュだとかパロディだとかが溢れている。そのあたりのことに詳しい人であればきっとニヤニヤしっぱなしなのだろう。でも私には全然わからないから割愛。
オマージュだけでなく引用も馬鹿多い。小見出しというかナンバリングというか、とにかく話が場面展開ごとに細切れにされているのだが、その文頭に毎回毎回何かの引用がつく。その数は40,50はあるだろうか。よくもまぁそんなに引用したものである。実に器用。
ミステリとしてはどうかというと、前述したように雰囲気がもうミステリミステリしていて、まぁミステリである。構造はシンプルなので犯人当ても容易かもしれない。もっとも私はそういうのやらないんだけど、普通に楽しめた。ハサミ男でもわかるように文章力があるから読みやすい。細切れ形式であることも読みやすさの一つの原因となっているだろう。やりすぎ感は否めなかったが。