名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

レビューっぽいものとか。

16品の殺人メニュー (新潮文庫)

16品の殺人メニュー (新潮文庫)

食べ物にまつわる殺人の話ばかりを16作もあつめたアンソロジー
ミステリちっくなものからファンタジー色の強い作品まで食べ物にまつわる殺人の話ならなんでもOK、というか食べ物あんま関係なくね?という作品まで幅広く収録した一品。
一品といったのはこの本自体があるひとつのコースメニューを模しているから。以下では、味わったもののうち特においしいとおもえたものの感想を一言ずつ述べていきたい。
〔野菜〕『凶悪な庭』キャロル・カイル
菜食主義のおばあちゃんと庭。ごく短く、非常にあっさり。多くを語らないながらも素晴らしい余韻を楽しませてくれる。今作のマイベスト。
〔メインコース『特別料理』スタンリー・エリン
めちゃウマい会員制食堂とそのシェフの話。作中、一番最後の形容詞がものすごくいい味を出している。終盤、主人公の感情がふっと読めなくなるところにも注目したい。
〔メインコース『おとなしい凶器』ロアルド・ダール
児童書でしかダールを知らなかった私。わりと新発見。凶器と狂気。現代的感覚では若干ありがちなネタ、かな。
〔香辛料〕『二本の調味料壜』ダンセイニ卿
調味料と理由付け。良きにしろ悪しきにしろ風味の強い作品。オチは単純でなかなか笑える。
〔飲み物〕『亡命者たち』T・S・ストリブリング
人間ドラマと毒殺のお話。最後の3ページで完全に置いてけぼり。なにがおこったし。それまでは味わい深い飲み物だっただけにくやしい。
〔デザート〕『幸せな結婚へのレシピ』ネドラ・タイアー
自由奔放なお嬢様と秘伝のレシピ。ネチネチ、さらっと片付けよう。教訓は感じるべき、なのか?
〔デザート〕『死の卵』ヤンウィレム・ヴァン・デ・ウェテリング
イースターに死のプレゼントを。非常にウィットに富んだ作品で、軽妙な語り口が心地よい。良作。
〔食後の腹ごなし〕『いつもの苦役』ビル・プロンジーニ
正直者が生きるにはどんなことだってしなくちゃいけない世の中なのさ。原文で読みたかった…orz

まぁそんなところで。(まつの)