- 作者: 円城塔
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/01/07
- メディア: 単行本
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読み続ける内、読み手としての自分の感性が段々分からなくなってくる。読んでいる自分は面白いと思っている。だけど、この本が本当に面白いのかわからない。用語が難しいとか、論理が理解できないとかそういう所から来ているのではない。それは今に始まったことではないし、そうであってもこれまでの円城塔の作品は間違いなく面白いと思うことができた。
この『後藤さんのこと』は何か違う。言葉遊びが多いから。不条理だから。そもそも小説の体を成していないものがあるから。それもある。だけど、それだけじゃない。それぞれの短編の持つ独特の空気感。短編1つからでなく、その集まりとしての『後藤さんのこと』が醸成する、名状し難い何かが読み手を困惑させていると思える。
新境地、なのだろう。円城塔の。あるいは迷走かもしれない。これまでの、論理に象られた世界から、新しい世界に辿り着いたのかもしれないし、その途中で道に迷っているのかもしれない。私には前者だと感ぜられるが、これを読み終わった今は、それすらも断ずることができない。
この本は、たぶん、おもしろい。その程度にしか語ることのできない自分を歯痒く思う。
まだ書くよ!