名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

異形コレクション 京都宵、未来妖怪

京都宵―異形コレクション (光文社文庫)

京都宵―異形コレクション (光文社文庫)

未来妖怪―異形コレクション (光文社文庫)

未来妖怪―異形コレクション (光文社文庫)

 タイトル通り異形なものをテーマにしたアンソロジー化野燐氏が描いてるということで、それを目当てに読んだが、他の作家の作品も非常によく、得した気分。手元に本が無いため、化野燐氏の作品の感想だけを書こうと思う。
youkai名彙:少し先の未来を舞台として、ある男が新しい妖怪たちつまり正しく「未来妖怪」達についての名彙を書く話。そこで書かれる妖怪たちは現在知られている妖怪たちのパロディともいうべき者たちで、未来での人類が新たに出会う現象の説明としてあらわれる。その点でいえば、非常に正統派な妖怪たちである。宇宙+実体の不明な恐怖という点で、なんとなくクトゥルフ的な臭いがあった。『未来妖怪』の他の作品にもクトゥルフな趣のある物があった。つまり旧支配者は宇宙妖怪だったんだね、と勝手に思い込んだりした。
夜の鳥:タイトル観たらすぐわかる通り、鵺が作品の一つのテーマになっています。もう一つのテーマは魔を完全に排除する「京都」という都のシステムですね。主人公はルポライターで鵺塚で拾った骨により鵺つまりこの場合、排除されるべき余所者になってしまう。京都の人々の無意識に植え付けられた邪悪なものを排除するというシステムは、有名な「ぶぶ漬け」の都市伝説とか一見さんお断りとかのある意味閉鎖的ともいえるもののことを言っているのかと、考えたりした。