名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

デンドロバテス(石渡洋司・山根章裕)

デンドロバテス 1 (ヤングチャンピオンコミックス)

デンドロバテス 1 (ヤングチャンピオンコミックス)

おはようございます!今日も一日ガンバリましょう!


さて今日紹介するのはデンドロバテス、タイトルと表紙だけ見るとオサレ系ガンアクションです。ですね。デモステネスでもですね、裸体と血液の乱舞するヤングチャンピオン紙上においてはもちろんそんなものは存在を許されません。そう、絶対に許されない。
具体的にこの漫画がどーゆーのかとゆーと、

世を忍ぶ仮の公務員、新宿北署会計課の仙川は夜になると眼鏡を外して法じゃ裁けねー腐った下郎どもをバチバチ撃ち殺すのであった!使用う銃は金庫の中の押収品だから、自分の胸ひとつで思うがままだ!頑張れ仙川負けるな仙川、可愛いあの子が泣いている、悪を殺せと轟き叫ぶ、死んだ者たちの無念をのせて、今こそ悪を撃つときだ!

とゆーもの。まぁちょいと変化球の殺し屋/ダークヒーローものっつったら確かにそうなんですが、件の「眼鏡を外して変身」*1やらミニョーラ風の作画やらアメコミの影響が見受けられて俺としちゃニコニコ。できるのです。
そしてまた殺し屋ですら殺されることと無関係ではいられません。「殺し屋版後期クイーン問題」と五分前名付けたこの現象において優れてるのは殺し屋ケラーシリーズの殺しのリスト (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)でありますが、仙川も警察から・そして犯罪組織から狙われる人間であります。つまり、殺し屋とはただ単に物語を終わらせる存在ではなく彼自身の物語にもコミットする/しなければならない存在である、ということです。殺し屋としての彼の正体を追う刑事・ジャーナリストも加わって混迷の様相を呈する本作は、間違いなくヤングチャンピオン誌中注目に値する一作でありましょう。会計課パートでの同僚吉村さん(きょぬー)との掛け合いがホンマ清涼剤やー。(片桐)