蘆屋家の崩壊（津原泰水）

蘆屋家の崩壊 (集英社文庫)

頑張って書いた分が消えたのでもういいや簡略化。

津原泰水は少女小説家、編集、ゴーストライターなんかを経て「妖都」でデビュー。以降、幻想、怪奇というジャンルに収まらない作品を書き、「綺譚集」で本読みに、「ブラバン」で一般人に受けました。良かったね。個人的には「ペニス」のぐちゃぐちゃっぷりがお気に入り。

で、「蘆屋家の崩壊」もちろんポーの「アッシャー家の崩壊」からタイトルだけとってきた。ほぼ無職の猿渡と怪奇小説家の伯爵が豆腐やその他うまいものを喰らい、途中で事件に巻き込まれるよ、といった感じ。文章はうまい。料理が旨そうだもの。

何個か抜き出して感想

「反曲隧道」６ページの間に登場人物紹介とジャブ代わりのホラーを見せてくれる。ここだけ読点の少ない文章が特徴だが、リズム感がいいので読み難くない。

「カルキノス」まぁバカミス。蟹うまそう。舞台が俺の地元ってのがまた。むかしに掲示板で津原本人に聞いたら「行ったことねえよ」とのこと。もっと丁寧に答えてくれたけど。

「ケルベロス」双子の間引き、狛犬、ケルベロス。こんにゃくの刺身旨そう。かなりセンチメンタルな話で、良い。犬かわいいよ。

「水牛群」本書の白眉。病んだ猿渡が解放されるまでの話。過去のエピソードがきちんと昇華する様はけっこう感動します。

そのほかは結構ストレートなホラーが多く、いずれにしてもバランスのよさが目立ちます。

にしても作風の幅が大きくて、例えば「ブラバン」読んだ人が「ペニス」読んだら卒倒するぞ、といった人。どうあれオススメします。（ハガ）