名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

ミスト

おはようございます。31日が読書会+新歓に決まったのでそのようにしてください。あとホワイトリカーソーダ割りってあまりおいしくないですね。


さてこないだミスト観に行きました。クローバーフィールドとハシゴしたせいで「モンスター映画と俺」みたいなタイトルの作文を書きそうになったのは秘密ですけど、とりあえず感想書きます。ネタバレ全開で。あと支離滅裂な文が嫌いな人も読まないほうがいいかもしれませんね。




中華ミストってむしろ古典的なモンスター映画なんですよね。だらぼんだらぼんでショーシャンクグリーンマイルなエモエモしい感動作を期待してたら箱開けて出てきたのはぴこぴこ動く触手だった!ふざけるなこんな触手ただのヌルヌルしたひもだー!というわけで、みなさま理不尽なスクリーンプレイにかなりの肩透かし、というか金返せ的な感情を抱かれた/抱かれるものと思います。もちろんここではそんな皆さんにミストを五億倍楽しく鑑賞できる方法を教えてあげたい!と思うのです。やることは3つ、もしくは4つしかありません。

  1. 原作を読む(できれば他のキング作品も読む)
  2. ゾンビ映画を観る(リメイク前の『ドーン・オブ・ザ・デッド』とかYESだね!)
  3. もっかいミストを観る

これであなたも立派にミストを批評できたりできなかったりします。間違えても孤島探索ゲーに手を出してはいけません。


さて、まず原作を読みましょう。なんか「原作とは違う結末!」「全く予想できなかった!」とか宣伝してますけど、主人公の息子が「パパ、怪物どもに僕を殺させないって約束して」なんて原作にない台詞を吐いてる時点で展開予想できますよねー。そんでさらに二転するとしたら「騎兵隊の遅すぎる到着」で完璧にラストが予想できるという。例によってキングの人が大絶賛してますけど、キングと宮部みゆきは信頼できない書評家ツートップなのでこれに懲りて眉に唾つけておくといいですよ。
ハイ。そしてゾンビ映画をたくさん観ましょう。暇があったらデッドライジングやるのもいいですね。「ショッピングモール」と言われたら「立てこもる」と条件反射的に返せるぐらいに観ておくとグッドです。もちろん、このミストとゆーのはショッピングモール映画としては駄作もいいところです。なぜならショッピングモールそのものがそもそも日常に根ざした非日常空間であり、そこへ反日常的な化け物が侵入することで三つ巴のケミストリーが生まれるわけです。ショッピングモールとはただ単に消費財が死ぬほどある場所では決してないのです。そういうのが観たければ別にサバイバリストの家でもいいですし、であればトレマーズ面白いですよね(余談ですけど、ジョジョのVSゲブ神とVSセッコ前半でトレマーズネタ使われててヒロリンもたいがいだなーとか思いました)。しかるにこの映画ではショッピングモールそのものの非日常性が全く表されていない、ということです。
ソビエトロシアでは閑話があなたを休題する。ショッピングモール映画としては大駄作――だってショッピングモールである必然性がどこにもないのだから――という意見が出たところで、間違いなくそれは原作の問題ですが、ショッピングモール映画にしなければならなかった理由を考えなくてはなりません。ポクポクチーン、はいもちろんミセス・“宗教狂い”・カーモディですね。「閉鎖空間内での人間性の崩壊と野蛮さの発露がどうのこうの」というアレです。ミセス・カーモディこそ主人公であり注目を要するキャラクタ、ということが分かったので、トイレで独りよがりなお祈りしたり化け物見て勝手に黙示録こじつけたりする彼女の姿を見て大笑いするのがこの映画の楽しみ方です。アメリカに蔓延するとか言われてるキリスト教原理主義者のことを思ってガクブルするのもいいかもしれませんね!


ちなむと原作の中篇「霧」は短編集『骸骨乗組員』のラストに収録されています。「ゴールデン・ボーイ」の原型たる「カインの末裔」、怪奇譚チックな「握手しない男」「死神」、感想の書きづらい「ほら、虎がいる」などがお勧め。

スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)

スケルトン・クルー〈1〉骸骨乗組員 (扶桑社ミステリー)

(片桐)