分解された男（アルフレッド・ベスター）

分解された男 (創元SF文庫)

きみはきみ自身という、偉大な人物を失ったんだよ、ベン。

ベスターの記念すべき処女作。第一回ヒューゴー賞受賞作。
ベン・ライクは企業間争いからライバル社社長の殺害に及ぶ。敏腕刑事パウエルはこの難事件の捜査を開始。ここに二人の対決の火蓋が気って落とされた！

と、まぁ、ミステリものの本作。未来の、人の心を透視する超感覚者たちの世界においてどう犯罪をおこなうか。SFとミステリをうまく融合させているところがミソ。

文体のアイデアに関しては、「虎よ虎よ！」や「ゴーレム100」の方がいろいろ工夫が見受けられる。しかし、個人的にはこちらの方が分かりやすいし、しっかりまとまっていて高評価。

ただ、小説の視覚表現っていうのは正直いってどうなんだろうと思う。それなら、他のメディアを使ったほうがはるかに効率がいいのではないだろうか？彼の実験をすべて低俗だと決め付けるわけではないが、字面に頼らずにもっと他の方法でうまく表現できないものかと思わなくもない。

どちらかというと、ベスターの作品は魅力的な登場人物と勢いが優れていると思うのだが、どうだろうか？（三笠）