名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

ブレードランナー(リドリー・スコット)

ブレードランナー 最終版 [DVD]

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このブレードランナーという映画はフィリップ・K・ディックSF小説アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』を原作としている近未来SF作品です。
近未来を密集した高層ビルに降り続く雨そして埃っぽい空気というイメージで描き出すことによってどことなく陰鬱な近未来像を提示しているのに加え高度に発展したテクノロジーに東洋的なものを混ぜているのは面白いと思います。GHOST IN THE SHELLの世界観をなんとなく思い起こしてしまったからかな?
タイトルでもあるブレードランナーとは宇宙開拓のために遺伝子工学により開発されたレプリカントと呼ばれる外見上は本物の人間と全く見分けがつかない人造人間が反乱を起こし脱走して、地球に逃げてくるのでそのレプリカントを発見し処理する専任捜査官のことです。
しかしこのブレードランナーという言葉は他のSF小説からとってきたものであり原作とはまったく関係ないのでハンターとかのほうがわかりやすくてよかったのではないだろうかと思う。
原作を読んでからだと別物といった感じを強く感じるのだが一番特に違和感を覚えるのは原作では人間そっくりの人工知能を備えたアンドロイド(人形ロボット)と戦っていくうちに人間とは何か? 人間と人工知能の違いは?という疑問を持つというのが重要なテーマであるのにブレードランナーでは遺伝子工学により肉体を超人的に強化して開発された人造人間レプリカントというアンドロイドというよりかはバイオロイドになってしまっている設定なので原作のような問いがしっくりこない点である。これはまずいんじゃないのかな。他にもつっこみ所はあるのだが多すぎるので控えておく。
教養としてみておく分にはいいとは思うが基本的にあまり見せ場のない単調な映画なので派手な撃ち合いとかを期待している人にはお勧めしません。ではなぜレビューしたからというとこの映画によってまた一人原作厨が増えてしまったからです。イイエイガダナー
(井出)