名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

銀齢の果て(筒井康隆)

銀齢の果て

銀齢の果て

 数年前に話題になった「バトル・ロワイヤル」の老人版で、高齢化対策のために一つの地区の70歳以上の老人に最後の一人になるまで殺し合いをさせるという「老人相互処刑制度」通称シルバーバトルが導入された近未来の日本を描いたブラックユーモアあふれる筒井らしい作品です。和菓子司の御隠居、陸自OB、元刑事、元大学教授などのさまざまな年寄りたちがシャベル、ライフル、出刃包丁、手榴弾を駆使して、本家BRにあったような青臭さは欠片もなく夫婦で自殺したり、ザクザク殺したりします。これだけだとたんなるB級グロのようだけれど、それだけではなく、社会の老人差別や老人自身の身勝手をいい具合に風刺していておもしろかったです。(安保)