名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

あ・じゃ・ぱん!上 (矢作俊彦)

あ・じゃ・ぱん!(上) (角川文庫)

あ・じゃ・ぱん!(上) (角川文庫)

 
 日本が第二次世界大戦での敗戦後ドイツのように壁によって東西に分断されたという設定のif物の偽日本史小説。たぶん上下巻で1000ページを超えているかなりヘビィな大作。主人公はCNNの特派記者でゲリラのリーダーの田中角栄にインタビューをするのが目的だがすでに一応目的を果たしてしまっているので下巻でどうなっていくかが気になる。
 いきなり

アテンション・プリーズ。このフィクションは小説です。あらゆる物語はロマンスなので、登場する団体名、会社名、及び個人名と現実のそれらと一切関係がないと誰に断ずる権利があるでしょう。

とあり、どう言えばいいか分からないがこういう巫山戯た文章が好きなので幸先よく読み始めた。本文も「神も仏もファックユー」とか「オーガスタス」などとあり、ウィットに富んでるというべきか巫山戯ているというべきか分からないが楽しく読み進められる。しかし設定を読み込むのが非常につらい。所々で「アテンション・プリーズ ○○は××で〜」という感じに説明が入るが、まとめて用語解説をしている部分が無いため、忘れるとどういう意味なのかを探し出すのに時間がかかるのは大きな欠点だと思う。上巻だけあって事件が起こって謎が増えるばかりでなかなか解決に至らない。下巻もかなりボリュームがあるけれど大団円を迎えられるかが少し心配になる。関西弁が標準語になっていたり現実の歴史上の出来事と少しズレていたりと設定が面白いので、用語解説集や偽年表などが無いのが重ねて悔やまれる。
 まだ上巻のため内容についてあまり感想が書けなかったので、次回の更新で最終的な感想を書く予定です。(toshi)