名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

東方儚月抄〜Cage in Lunatic Runagate. (ZUN)

東方儚月抄 〜Cage in Lunatic Runagate.

東方儚月抄 〜Cage in Lunatic Runagate.


 キャラ☆メルで連載されていた3誌合同連載企画の小説版の書籍化。タイトルが箔押しだったりと装丁はなかなか豪華。TOKIAME氏による挿絵は水墨画っぽい感じが素敵で妹紅が格好良かったり妖夢がやけに可愛かったりとすごく良かった。基本的には毎回別のキャラの一人称で綴られるオムニバス形式のストーリー。永夜抄の続編的な位置づけで初のシリアスストーリーなどの触れ込みで連載が開始されたが、永夜抄組が空気だったり結局いつもの東方だったりしたのでアンチが沸く結果となった。
 小説版はどちらかというと漫画版の補足というか舞台裏を語るような内容なので漫画の方を読んでないと基本的に意味が分からなくなる。キャラの掛け合いなどはゲームの方と同じようにZUN節炸裂といった具合でファンなら楽しめる。文章自体は淡々としており、なんだか「ハーモニー」を読んだときみたいな気分を味わった。妹紅の過去話は蓬莱の薬を飲んだいきさつや妖怪の山の設定が語られたのでありがたい。正直この話が一番必要だったと思う。神主にはいつも通りのことだけど、妹紅のキャラが永夜抄の時からほぼ真逆になっている。分かったことが増えたのはいいが、嫦娥の設定とか神の降ろし方などでいらない設定を出したのは明らかに失敗のように思われ、これのせいで分からないことが増えたり、整合性が取れなくなってしまっている。ほかにも永夜抄のテキストとの矛盾があったりなどと問題は多い。ラストは漫画版が完全にギャグで終わっていたので少しアレだったが、小説版の終わりはかなり良かったと思う。輝夜・永琳を幻想郷の人間サイドに組み込むことで永夜抄での事件が完全に解決し、永夜抄が真の完結を迎えたと言えるので永夜抄の続編という触れ込みをしっかりクリアしている。批判とかも書いたけど個人的には妹紅の過去とか妖夢の異常な可愛さなどが楽しめたので信者補正を含めればいい作品だったと思う。
 ツイッターでの神主のつぶやきをみると紫の「幻想郷は全てを受け入れるのよ。それはそれは残酷な話ですわ」というセリフが思い出される。神主も批判を聞いているらしい。儚月抄スレをみるとアンチだらけでもれなく嫌な気分になれるので見てみるといいんじゃないかなと思う。(toshi)