名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

宇宙賃貸サルガッ荘(TAGRO)

宇宙賃貸サルガッ荘(1) (KCデラックス モーニング)

宇宙賃貸サルガッ荘(1) (KCデラックス モーニング)

人には勧められない漫画として有名(?)な「変ゼミ」の作者TAGROの描いた四畳半スペースオペラの復刻版。タイトルは一度入ったら出られないことに定評のある「サルガッソ海」に由来していて、つまるところオヤジギャグである。本人はこのタイトルを思いついたとき「しめた!」と思った、ということがカバー裏漫画で語られており、ストーリーはタイトルの後付らしい。
そのストーリー。主人公テルは宇宙戦闘機パイロットなのだが、都市伝説と思われていた一度入ったら二度と出られないサルガッソー(宇宙船の墓場)に遭難。死にかけたところを魔女のメウに助けられる。彼女はサルガッソーの中にある小惑星に建てられたアパート(安普請)の管理人だった。やむを得ず抄流我荘での生活を始めるテル。しかし直に、彼の祖父もこのサルガッソーに迷い込んでおり、しかも脱出した、ということが明らかになる。そういうわけで、脱出を諦めない主人公と、抄流我荘の面々との掛け合いが主の漫画である。
四畳半モノである以上、キャラに魅力があるのは当然である。一号室の、漬物作りが趣味の妙な言葉で話す天才少女アサ。二号室の、管理人さんにベタ惚れで主人公のことが嫌いなガチレズのスイ。三号室の、だらっだらの不健康でどう見ても水商売の人なキティ。四号室が、種族的には主人公の所在していた軍と敵対していた四本腕の宇宙人だが、本人は普通にいい人のロロ。五号室は主人公だけが取り柄の突っ込み役テル。六号室が、サルガッソーの謎を解くために自らやってきた若い博士リコ。そして抄流我荘の管理人であり魔女であるメウ。いやー、なんかもう、いかにもという感じ。そんななので、初めのうちは期待していなかったのだが、しばらく読み進めていくうちに「あれ、案外面白いんじゃ…」と思えてきた。その原因は、繰り広げられる四畳半スペオペの背景となっている「スペース」の生かし方と、決して良いとも言えない独特の話のテンポである。なんと言ったらいいかな、ありがちといえばありがちなのだが、独特といえば独特な漫画である。
さっき気づいたのだが、二巻が昨日発売だった。買わなきゃならんよ。
またこの復刻プロジェクトは、変ゼミ連載中のモーニング・ツーからなされており、そのサイトから少しばかり無料公開されている。正直コレを読んでも全然面白そうではないのだが、とりあえず暇な人は是非。
http://morningmanga.com/sargasso/
(條電)