名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

HAL

新装版 HAL―Hyper Academic Laboratory (ガムコミックスプラス)

新装版 HAL―Hyper Academic Laboratory (ガムコミックスプラス)

『HAL』は漫画家「あさりよしとお」の描いた似非科学漫画である。
あさりよしとお」といえば、最近なら『るくるく』古いのなら『宇宙家族カールビンソン』あたりが有名な漫画家だが、彼の代表作というとやはり『まんがサイエンス』だろう。今は亡き学研の『科学』に15年以上というこの手の漫画としては異例な長期連載をした、同誌の看板漫画である。この漫画に影響されて科学の道を志した少年少女の数は決して少なくないだろう。
まんがサイエンス』は、基本的に一話完結で、毎回様々な分野の科学知識を主人公たちの目線を通して学んでいく、というスタイルで描かれている。そのスタイルは『HAL』にも受け継がれているのだが、目次にある「このマンガには一部に真実が含まれている場合があります。」という文句が話をややこしくしている。
最初に書いたように『HAL』は似非科学漫画、つまりこの漫画に出てくる科学知識はそのほとんどが嘘なのである。それだけなら問題は無いのだが、嘘に混じってさりげなく本当のことが描いてあるから性質が悪い。
「物体が観測者から高速で離れて行っている場合、光のドップラー効果によって観測者からは物体が赤くなって見える。つまり日本はユーラシア大陸から太平洋に向かって離れて行っているので日本から見て中国は……」みたいな感じだ。
ある程度科学方面の知識があって、なおかつそれらを茶化すようなギャグを受け入れられる人間でないと、いまいち面白く読むことのできない、微妙に読み手を選ぶ漫画だった。