月曜更新されてないじゃないですか! やだー!
勝手に更新してもいいんですか! やったー!
というわけで(何が「というわけ」なのかさっぱり分からないんだけど)、当会のゼロ年代ベストにもあげた『黎明に叛くもの』の紹介をする。
- 作者: 宇月原晴明
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/07
- メディア: 文庫
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数々の歴史の疑問を解決してくれるのは伝奇小説ならではの魅力だろう。久秀が東大寺大仏殿を焼き払ったのはなぜか? なぜあの戦国武将たちは急死したのか? そして信長暗殺の秘密すらもが明らかになる。すべて主人公松永久秀がイスラム教徒暗殺派だったから、ということだ。ちなみに果心居士は彼の傀儡人形で別名ハシム、果心=かしん=ハシムという駄洒落にはいささか開いた口がふさがらなかった。
タイトルにもある「黎明に叛くもの」とは明けの明星、イスラム教のシンボルでもある金星のことだ。太陽の出るまえにひときわ光を放つこの星を、戦国の太陽たる信長に何度も反逆しながら許された久秀になぞらえて何重もの意味を持たせる。道三を兄弟子としたのも、梟雄つながりだけでなく彼の信長や光秀との関係を活用するためであろう。近年の歴史伝奇小説では出色、これからも是非注目していきたい作家のひとりである。(gern)