名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

 空の中 (有川浩)

空の中 (角川文庫)

空の中 (角川文庫)

 四国沖の航空自衛隊の演習空域で謎の事故が相次いで発生した。生き残った自衛隊パイロットである武田光稀と航空機メーカーの自己調査員春名高巳は調査のために事故現場である高度2万メートルの上空へ向かいそこで謎の巨大生物と遭遇する。一方事故で殉職した自衛官の息子の斉木瞬と幼馴染の天野佳江は高知の海岸で不思議な生き物を拾う。謎の生物とかかわりをもった高巳と瞬のW主人公で物語は進行していく。

 謎の生物は公式には「白鯨」と呼ばれ自衛隊が見つけた方はディック、瞬達が見つけた方はフェイクとそれぞれ名づけられる。最初はこの生物と壮絶な戦いえお繰り広げるのかと思っていたが、実際は「白鯨」と人間が共存していくための交渉の過程が描かれている。この交渉の内容がほとんど言葉遊びのようなものになっており非常におもしろかった。

 また文庫版には後日談である「仁淀の神様」が収録されている。(tamo)