名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

アヒルと鴨のコインロッカー (伊坂幸太郎)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

アヒルと鴨のコインロッカー (ミステリ・フロンティア)

「第25回吉川英治文学新人賞」を受賞した伊坂幸太郎の五作目。今作も出るぞボブ・ディラン
この作品は「現在」と「二年前」が並行して語られており、現在が結果、二年前が原因となっています。その「現在」では本屋を襲うことを発端とした主人公とその隣人“河崎”の交流を、「二年前」では動物虐待事件という大筋の中での琴美と恋人のブータン人のドルジ、そして河崎の交流が描かれています。

「本屋襲って広辞苑盗もうぜ!」にもちゃんとした理由があるのでここで意味わからんと切るのはもったいない。なんでもないことも伏線として徐々に明らかにしながら最後に「現在」のそれぞれの出来事が全て「二年前」のそれらとリンクしていてスッキリします。麗子さんの痴漢撃退とかとか。どんでん返しな展開が大好物な人にお勧め。話の核に触れたときに驚きよりも悔しさが先立ちました。
この作品は「河崎」を好きになれるか否かで好き嫌いが分かれるのではないかなと思います。「イケメン○ね」と思っちゃたら駄目でしょう。

しかし、せっかく響野さんの名前を出したなら本編にも絡ませてほしかったと思ったりもしました。(なk)