名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

パオロ・バチガルピ『神の水』

超水不足の未来。分裂寸前に陥ったアメリカでは、水利権を巡って州同士が争ったり、ときに州軍を動員して小競り合いを起こしたり、工作員を使って地上げ(水上げ?)したりしているわけですね。『神の水』の舞台は、そういうお先真っ暗な感じの未来アメリカです。『ねじまき少女』はバイオ産業でぐちゃぐちゃになったタイが舞台だったし、バチガルピの書くのって暗い状況ばっかりだすな!
主人公となるのは州の工作員、女性ジャーナリスト、たくましく生き抜く貧困層の少女の三人。職も出自も異なる彼らが水利権を揺るがす大事件に巻き込まれていく、『神の水』とはそういうお話です。ストーリーラインの融合のさせ方、間のもたせ方などが非常にうまく、ページめくらせ力がかなり高い作品でした。
個人的には「『フォールアウト9』が超売れた」という小ネタがツボでした。4出たばっかじゃん! つーか水不足な状況っつーのに核戦争後が舞台のゲームで遊ぶなや! 戦わなきゃ現実と!
(やまもり)