名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

家畜人ヤプー(沼正三)

家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

家畜人ヤプー〈第1巻〉 (幻冬舎アウトロー文庫)

二千年後の未来、人類は地球を飛び出して宇宙帝国EHS(イース)を築いていた。イースは厳格な階級制が布かれた白人優位の女権専制社会で、その下には半人間として蔑まれる黒人奴隷、そして最下層には「ヤプー」と呼ばれる旧日本人がいる。彼らは人権を認められず、肉体を加工されて道具として扱われている。人間椅子、肉便器、女性の自慰行為に奉仕する舌人形、などなど。
未来からやってきた白人女性ポーリーンに連れられてイースを訪れた白人女性クララと婚約者の日本人男性瀬部麟一郎、二人はどうなっていくのか・・・

 SF・SMの名作です。とにかく細部にまでこだわった世界設定が特徴で、ヤプーは他にも縮小化、食用、堆肥、と幅広い用途に使用され、内臓に特殊な寄生虫を仕込むことで白人の糞尿(ネクタル、アンブロシア)から栄養を摂取します。黒人にも胃腸内で尿素をアルコールに変える酵素が与えられ、白人の尿が酒として与えられます。加工は精神にも及び、ヤプーは生まれてすぐに白人崇拝を教育されそれぞれの作業を宗教的奉仕として捉え、たとえば人間椅子は「白神の御神体を支える光栄」に震え、苦痛を感じるどころか歓喜にうちふるえています。グロさ全開の割には悲壮感が感じられなくていい具合に設定を楽しめます。というか設定以外に特筆すべきことはありません。

 読んでいるのを見られると確実に友達を減らす類の作品ですが、是非一度見てみてください。

安保