名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

スペースマン

スペースマン (新潮文庫―宇宙SFコレクション)

スペースマン (新潮文庫―宇宙SFコレクション)

読むスピードが遅くなったため、去年読んだアンソロジーを今年になってやっとレビュー。
「宇宙SFコレクション」の1巻目。1950〜80年代に発表された作品を収録しているため、独創的というか夢想的といった感じのものが多い。アポロ計画が始まる前に書かれた作品では、個人が宇宙船を作って各々勝手に宇宙に行く、という夢のある話も。とりあえず印象に残った短編をいくつか紹介。

「月を盗んだ男」チャールズ・シェフィールド 1980年

主人公たち2人は宇宙船を飛ばす実験をしたいが役所に規則で縛られている。そんな状況の中で宇宙事業を発展させよう、という野望を持った男の話。裏世界で暗躍し、法の網をかいくぐって宇宙事業を着々と進めていく。捜査の手が彼にのびるが…。当局のさらに先を行く主人公の計画が気持ちよく作品の締めを飾る。

「いこいのみぎわ」レスター・デル・レイ 1955年

高性能だが高コストなボロい旧式宇宙船に乗る老夫婦の話。
隠居するか否か、そして隠居したところで何をするか。仕事一筋の人間が老境に入らんとする際の葛藤を描く。誇り高く生きてきたスペースマンの決断をだれが止められようか。

「かくて光あり」ジェイムズ・P・ホーガン 1981年

GODって大変だな、というほのぼのした話。
言葉遊びと登場人物の掛け合いをにんまりと眺め、最後で噴く。なんだこれ。

「空間の大海に帆をかける船」バリントン・J・ベイリー 1974年

中二病でほぼホームレスな秀才が登場するバカバカしい話。常識を打ち破る発想に驚き、それで終わりかよ!と驚く。「その発想はなかったわー」と思わされる話。

「バースデイ」フレッド・セイバーヘーゲン 1976年

宇宙船内で年に1日しか起きない14歳の少年が、毎日普通に暮らしていく24人の赤ん坊たちの世話をするようマザーコンピュータに指示され、赤ん坊たちが育っていく過程を描いた話。締めがよくわからず、意味不。
アンソロジーのレビューは分量が不規則になってしまう。でも面白い。今日はこの辺で。(武)