名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

有頂天家族(森見登美彦)

有頂天家族

有頂天家族

森見登美彦の6作目。京都物だが大学生物ではなく狸物です。京都の街を舞台に人間・天狗・狸が入り乱れて繰り広げる三つ巴の阿呆話。
阿呆な三男矢三郎をはじめ、真面目で土壇場に弱い長男、蛙になり井戸に引きこもった二男、化け力が弱く頼りない末弟、そして母の狸一族下鴨一家。天狗勢は全盛期から凋落した下鴨兄弟の先生である赤玉先生にその不肖の弟子で既に赤玉先生を超えた元人間の弁天。そして年に一度狸鍋をして狸達に恐れられている「金曜倶楽部」の人間達。これらの登場人(?)物で下鴨一家と夷川一家の諍いを軸に下鴨4兄弟の父の死の真相へ向けてドタバタと物語は進んでいきます。
大学生物はニヤニヤ読み進めていったが、こちらはニコニコ微笑ましく和みながら読める作品。森見氏独特の面白可笑しい文体・テンポはそのままに、下鴨一家を通して「家族愛」描かれています。偽電気ぶらんや「夜は短し歩けよ乙女」のある人物が出てきたりと相変わらず他作品とリンクしておりそれを探すのも面白い。矢三郎と赤玉先生のお互いに全てを了解した会話は味わい深く、敵の金閣銀閣はバカわいくて憎めず、元許嫁の海星はツンデレかわいい。今後出る第二部が今から待ち遠しい出来。
NHKでラジオドラマ化していたようでその時点で知らなかったのが残念でならないです、だれか録音してたら貸してください。文庫本も出てるのでお求めやすいですよ。(なk)