名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

ペンギン*ハイウェイ(森見登美彦)

ペンギン・ハイウェイ

ペンギン・ハイウェイ

「怒りそうになったら、おっぱいのことを考えるといいよ。そうすると心がたいへん平和になるんだ。」、なんだこの小学生は…!
森見登美彦書籍最新作である今作は狸が主人公でも大学生が主人公でもありません、小学4年生が主人公です。しかし純粋無垢な小学生が繰り広げる話ではなく大学生物の主人公の子供時代のような、死や宇宙について考察をしちゃう頭がよく理屈っぽい「お前何歳だよっ」と思ってしまう子供の話。
研究熱心な主人公「ぼく」が通学途中にペンギンに遭ったことから始まり、そのペンギンの研究、ペンギンを生み出す歯科医の「お姉さん」の研究、「海」の研究、プロジェクト・アマゾン…、そんな「ぼく」が研究中の問題が1つの問題に収束していきクライマックスへ。すずき君帝国やプロジェクト・アマゾン等々なんだか少し懐かしい気分にもさせてくれます。
今作は森見作品の特徴であるマジックリアリズム全開の話なので苦手な人は苦手かも知れません。また、私は背伸びした感じで微笑ましいと感じましたが理屈っぽく子供らしくない小学生が主人公であること、舞台が京都ではない、他作品との関連が無い、ラストのビターな感じ、と従来の作品とは大きく異なり新規の人・今までのファン共々人を選びそうな作品だな、とは思いました。(なk)