名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

真理先生(根元敬)

真理先生

真理先生

作者は雑誌『ガロ』出身の漫画家で、「特殊漫画家」を自称する根本敬先生。

本書は2章のエッセイ集と1本の小説からなる3部構成で、エッセイに挟まれる小説は、会津藩の家老の家計に生まれた男・河村清定の一代記になっています。清定はその美貌故に幼少からモテにモテながらも厳格な祖父により禁欲的に育てられますが、老後とある変な老人の影響で、失われた日々を取り戻さんとするかのように性欲を爆発させ、10代の頃岩場で誘惑されて以来、60年近く執着し続けた年上の女性を追いかけたまま、それはそれは壮絶な死を遂げます。

そして次章では何事もなかったかのように、エッセイが続きます。これも一癖も二癖もある物が揃っていますが、中でも義母から甲斐性の無さを非難された事をきっかけに、表現とわが道を行く事について考える「男にとって甲斐性とは」、相田みつをの言葉から壮大な思考の迷路に迷い込む「人間だもの――伝達回路を開通せよ」に特に惹かれました。

これといったジャンルで括りにくく、何とも人に勧めるのが難しい一冊ですが、刺激に満ちた本だと思います。

追伸:前回更新から一月も空けてしまい申し訳ございません。今週からは通常運転で行きます。(tan)