名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

超新星紀元 (劉慈欣)

1999年末、超新星爆発によって発生した放射線バーストが地球に降り注ぎ、人類に壊滅的な被害をもたらす。一年後に十三歳以上の大人すべてが死にいたることが判明したのだ。“超新星紀元”の地球は子どもたちに託された……! 『三体』劉慈欣の長篇デビュー作

 先日、金沢へ行く機会があったのだが、時間があったので金沢市立玉川図書館に立ち寄った。『走る赤』や『蒸気駆動の男』など、名古屋市の図書館に置いていない作品が多数あり、羨ましかった。今回レビューする『超新星紀元』も本棚に置いてあるのを見て(こちらは名古屋にもあるが)、読もうと思ったが帰りの電車に間に合わなくなりそうなのでやめた。

 今年7月に刊行した劉慈欣の『超新星紀元』。そろそろ中国SFの翻訳ラッシュも収まってきた頃だが、個人的にはまだ続いてほしいな……。郝景芳の長編とか読みたい。
 前半は子供だけになった世界で彼らがどう困難に立ち向かっていくかの話。1年の猶予があれば大抵のことは大人から子供に引き継げる……のか?主人公である華華、メガネ、暁夢らは国の指導者として、量子コンピュータのビッグ・クォンタムの助けを借りて、治政を進めていく。子供が「遊び」を基本原理として行動しているという話はなるほどと感心させられた。
 後半は各国の子供首脳たちが駆け引き(戦争)する話。温暖化で暖かくなった南極で繰り広げられる「戦争ゲーム」パートが長すぎる。遊びの内容と結果を事細かに書かなくてもいいのではと思った。最後のゲーム(中国とアメリカの入れ替え)は非常に面白そう。子供世界だからこそできるゲームで、結末は直接的には描かれていないがおそらく成功したのだろう。ちなみに後半部分にビッグ・クォンタムは出てきません。世界中の子供たちが殺しあっている中、何してたんでしょう。(肇)