- 作者: 栗本薫
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1988/03
- メディア: 文庫
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この本は初期の栗本の、パロディSF短編集である。だがパロディだけあって、元ネタが分からないと面白さがほとんど伝わってこない。私はピーナッツの牧場主から大統領にまで上り詰めたジミー・カーターを知らないし、火星のジョン・カーターも全然分からない。もっともスペオペのお約束と言う奴は分からないでも無いので、全く意味がわからなかったと言うわけでもない。「悪役に攫われる」というのはナルシシズムをくすぐるものらしい。なるほど、と思う。
方程式ものが二編入っていたが、それは少し楽しめた。方程式ものというのがなんなのかは、私が以前ここで書いた「冷たい方程式」の感想を参照していただきたいが。特に「ナマコの方程式」の方の、密航者が増加しすぎた世界という設定が愉快だ。懸命に輸送会社が密航者撲滅キャンペーンを行っているのにも関わらず増え続け、発見された密航者はかたっぱしから宇宙空間に放り出されている。こうなってしまってはロマンチックも何もない。その上…どうせこの本を読む人もろくにいないだろうから完全ネタばれしてしまうが、宇宙船に乗り込んだ密航者が可愛い声したナマコ型の宇宙人で、最終的に操縦者を飲み込んでしまうことで方程式を解いてしまう。これは酷い。ショッキングピンクのでっかい海鼠に飲み込まれて人生を終える操縦者には同情したい。