名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

『ゴールデン・マン』(フィリップ・K. ディック)

ディック傑作集〈3〉ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫SF)

ディック傑作集〈3〉ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫SF)

ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-18 ディック傑作集)

ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-18 ディック傑作集)

 読んだのは上。下のほうが入手しやすい。しかも解説付き。新装版推奨


 ディックの短編集。表題作『ゴールデン・マン』はニコラスケイジ主演の映画『NEXT』の原作。ただ、『NEXT』との共通点は、未来を予知できることだけらしい。忠実に映画化すると、ニコラスケイジの体を金色に塗りたくらなければならず、ただのギャグ映画になってしまうので、改変したのは賢明な判断だったと思う。観てないから、映画の出来は知らないですが。

 収録された7編の中では『妖精の王』が個人的ベスト。冴えないおっさんがフェアリーのキングになる、ただそれだけの話なのに、とても面白い。おっさんの見てる世界が正しいのか、それとも他の人間が見てる世界が正しいのか。最終的には妖精の存在を肯定して終わるのだけれど、それもおっさんの妄想かもしれない。現実と虚構の境目でグラグラ揺れる。PKD読むのはまだ5作目だから、エラソーなこといえない。でも、こういうメマイするような感覚、ディックっぽい。

 あと、面白かったのは『小さな黒い箱』と『融通のきかない機械』。『小さな黒い箱』は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のもとになった短編。ディック曰く「アイデアがうまく表現されているのは、この短編のほう」ということ。共感ボックスにこだわり強いみたい。『融通のきかない機械』はSFなのだけど、ミステリーっぽくもあった。SFミステリーってこんな感じなのかなー、と考えながら読みました。

 ディックは今のところハズレがないですね。部室にまだ大量の未読があるので、どんどん借りていきたいです。(h_less)