- 作者: フィリップ・K・ディック,土井宏明(ポジトロン),浅倉久志
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1984/07/31
- メディア: 文庫
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作者がこの作品の中で想定した世界はかなり現実味を帯びているように感じられた。とくに作中に登場するドイツ人の多くは、ナチスのユダヤ人虐殺などの非人道的な部分を色濃く反映した異常性を抱える人として描かれている。逆に日本人は精神的に高位な存在として描かれており、戦前の日本人の影響を強く受けているように感じられる。枢軸国が勝利をおさめ、そのまま世界が発展していくと仮想すれば、まさに人々はこのような側面を持っているのではないかと思え、作者の想像力の豊かさが感じられた。
ディックがテーマとしてよく用いる現実の崩壊は今作にも色濃く反映されている。別世界に迷い込む登場人物や、最後に明かされる作中に登場する小説の秘密などがその最たる例として挙げられる。
全体として歴史改変作品として非常にリアルで読み応えがあったと思う。ただ登場人物が多すぎて誰が誰だかわかりにくいというのは少し感じられたかな。
(ねつ)