名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

空は船でいっぱい

前作「冷たい方程式」に続くSFマガジン・ベスト第二弾。
アンソロだが、中編集というべきかな。一作一作が結構長い。収録作品は六編と、かなり少ない為である。
前作が誰にでもお勧めできる快作だったのに対し、今作はいまいちだった。前作以上に古さを感じさせる作品が多く、全く鋭さに欠ける。レビューの内容を考えるのも億劫である。

一番良かったのはレイ・ブラッドベリの「われはロケット」だろうか。そこは流石ブラッドベリと言うべきだろう。意志を持ったロケットの生涯を、詩情たっぷりに謳い上げている。哀愁と愛情に満ちた作品である。残念なのは私があんまりブラッドベリを好きじゃないってところ。抒情的な作品が苦手なのである。

C・L・ムーアの「美女ありき」もなかなかであった。少々、いや、かなりしつこいのが問題だったが。女性の生まれ変わりと言うと「接続された女」を思い出すが、あれは端末は本物の人間そっくりだったのに対し、こちらは美しく官能的であるものの、金属でできたロボットである。また中の人(不適切な表現だが)も、あちらはどうしようもない醜女だったのに対し、こちらは間違いなく世界で最も美しいとされた絶世の美女。彼女は自信満々で舞台の上、銀幕の世界へ復帰しようとする。しかし社会はそれを受け入れられるのだろうか。また、完全に機械の体へと変化してしまった彼女は、人間であり続けることが出来るのだろうか。と、疑問が投げかけられたところで終わってしまう。なんということだ。

表題作であるシオドア・スタージョン の 「空は船でいっぱい」は、有名どころだけあって一定のラインは満たしているものの、決して面白いとは思えなかった。半分狂ったような天才、と言うよりも運が良い科学者の発見と、それに付き合わされる一人の技術者。この科学者のうわ言にも似た数々の発言はなかなかだったが、話の展開自体に面白みが無い。
ポール・アンダースン&ゴードン・R・ディクスン「くたばれ スネイクス!」 は、面白そうなのにそうでもなかった。ただ、椎名誠の「雨がやんだら」に収録されている短編「生還」が、確かこれのオマージュだったという記憶がある。ちょっと自信ないけど。こちらは面白いので是非。(條電)