名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

京都SFフェスティバルレポその1

11/21・22に京都で開催された京都SFフェスティバルに我々名大SF研から数名参加したのでレポを書いていこうと思います(遅くなってしまいましたが……)。
ただ、3人で4つある本会企画を分担してレポをとっていたので、各人が自分の担当した本会企画と参加した合宿企画のレポを別々に書くことになりました。
私が記録した本会企画は四コマ目の「ウラジーミル・ソローキンの世界」です。
合宿企画は「若者部屋」「名古屋SFシンポジウム部屋」「サキの部屋」に参加しました。

・本会企画1コマ目「ウラジーミル・ソローキンの世界」
『ロマン』『青い脂』など発表し現代ロシア文学を牽引する作家ウラジーミル・ソローキン。本年〈氷三部作〉の邦訳刊行開始され、日本でも人気を博するソローキンの魅力をソローキン作品の翻訳者である松下隆志氏と翻訳家、評論家である柳下毅一郎氏が語られました。
現代ロシアでは小説は日本では純文学にあたる芸術文学と娯楽小説にきっぱりと棲み分けがなされていることや、SF的なアイデアを多用するソローキンは自身をSF作家とはみなしていないこと、旧来の『ロマン』『青い脂』などのソローキン作品は文体模写などを多用し既存のものを壊していくスタイルで、『氷』以後のソローキン作品は一貫したストーリーがあり、そのスタイルは自分で組み立てたものを自分自身で壊すというものに変化し、ロシア国内でも大きな反響をよんだということ、ソローキン作品に頻出する中国モチーフの意味についての話し、ソローキン作品で描かれるソビエト史とドイツとの関係性からトルストイがナポレオンの登場でロシア帝国が出来たと描いたというように、ソビエトナチスドイツとの関わり合いにより形作られ、ドイツへの気持ち悪いが惹かれるというソローキンの思いが読み取れること、現在刊行中の〈氷三部作〉の全体像や早稲田文学で連載中の『テルリヤ』の内容の紹介、ソローキンの影響を受けた作家が現れて邦訳も始まっていることなど興味深い話を沢山聞かせていただきました。
中でも面白いとおもったのが、ドフトエフスキー、トルストイなど偉大な作家を有する古典ロシア文学とソローキンなどの現代ロシア文学の間のソ連文学は殆ど邦訳されておらず、今後ロシア文学研究では古典ロシア文学と現代ロシア文学の間だけではなくソ連文学との関係性をも考えていかなけらばならないという話と、SFという本命を掲げてある種の社会批判ができたソビエトSFにはソローキン作品との連続性が存在するという話です。これからの日本における豊かな露文研究に期待したいと思いました。
また、会場に設置されたプロジェクターにはソローキンのインタビュー映像や、『テルリヤ』を再現するイベントでソローキン本人が中世人のようなコスプレをし、裸の女の人たちに囲まれて楽しそうにしている画像が映され、ソローキンの意外な一面を見ることも出来ました。

・合宿企画
旅館さわや本店で行われた合宿企画。
1コマ目は「若者部屋」私は行き、他のSF研の方々と親睦を深めに行きました。ただ、学祭と被っていたためか若者部屋にいたのは名大SF研と京大SF研しかいなかったのは少し残念でしたが、その分より親睦を深めれたと思います。外部の人たちと作家や本の話を色々とするのは大変楽しいですね。最後の方、白石晃士の話をしていたのですが気付くと京大SF研の人が半分程いなくなっていました。

2コマ目は「名古屋SFシンポジウム2015レポート」に行きました。というのも、名古屋SFシンポジウムは名大SF研も関わっているからです。シンポジウムの内容をざらっと説明し、今後の方向性を参加者の方々と話し合った結果「女子大で開催されているのにも関わらず女子大生が少ないので、もっと女子大生を呼ぼう」という非常に有意義な答えがでました。

3コマ目は企画者の一人として「サキの部屋」にいきました(まぁ私は殆どなにもしていないのですが)。サキというのは今年没後99年のイギリス人で、オーヘンリーとならぶ短編の名手として知られ、その冴えわたるブラックユーモアが大きな魅力である作家です。今年は現時点で4冊ほどサキの作品集が日本で刊行され、地味ながらブームというものが来ていると思われたため、この企画をたてた次第です。この会では参加者の皆さんとサキの魅力を語りあい、あるいは伝えあいました。サキとか絶対性格悪いし友達になりたくないよ、とかサキはいわば古典と分類されるので手を出しにくいのでは、とか今年サキ作品集が沢山刊行されたので来年没後100年を迎える際に気楽に手に取れるようになったのでは、などという話で盛り上がりました。参加してくださった皆様ありがとうございました。

4コマ目以降は「麻雀部屋デレステ部屋」と「ボードゲーム部屋」でゴロゴロしながら夜を明かしました。

今年は例年より一か月遅い開催で多少心配しましたが、そのような心配は杞憂で、様々な企画を通し非常に刺激的で楽しい時間を過ごさせていただきました。 (詠)