名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

AI 2041 人工知能が変える20年後の未来(李開復・陳楸帆)

【最高のストーリー+AI技術解説で描く「20年後の私たちの世界」】

‡AI保険が個人生活を深層学習、恋愛相手まで決める
パンデミック対応でAI医療が発達。非接触型社会へ
‡完全自動運転とスマートシティ。移行期の課題とは
‡没入型VRがエンタメを一変。東京がメタバース聖地に
‡バーチャルAI教師が子どもを教育。才能を開花させる
量子コンピュータが発達。AI兵器が人類存亡の危機を招く
‡幸福の定義が変わり、経済モデルは全く新しくなる

われわれはAIに降伏するのか? それとも、AIでよき未来をつくるのか?ChatGPT、深層学習、未来予測、自然言語処理、AI教育、ディープフェイク、自動運転、VR/AR/MR、メタバース量子コンピュータ、仮想通貨、ブロックチェーン、AI兵器、幸福感、消える職業・生まれる職業、ベーシックインカムなど、本書一冊ですベてを網羅。ビジネスパーソンの生き残りに必携の「SF的ビジネス教養書」が誕生!

 実はこの前のPITに間に合わなかったやつです。

 元Google中国の社長・李開復がAIによって変革を遂げた2041年の世界を予測し、それに基づいて稀代の中国SF作家・陳楸帆が未来の物語を紡ぐ、というコンセプトの本。深層学習やブロックチェーンなどの「聞いたことはあるけどなんだかよく分からないAIにまつわる用語」をわかりやすく解説し、近い将来AIが我々に与える影響を的確に示した本だ。AI入門書として読むことを薦めてもいいが、今回は小説パートに焦点を当てる。
 陳楸帆は『荒潮』が傑作だったから、こういう分かりやすい(普段SFを読まない人にも手に取ってもらえるような)短編はそんなに向いてないんじゃないかと思っていたけれど、まあそこそこ良かった。AIが変えてしまった世界の仕組みの中で翻弄されながらも生き続ける人々がうまく描かれていた。日常的な物語に関しての面白さはそこまでだなぁと感じた(「恋占い」とか「アイドル召喚!」とか)。
 それにしてもあと20年もすればこんな世界になるのかと思うと少し楽しみでもある。ただ、合間に挟まれるテクノロジー解説では、2041年には太陽光や風力などのクリーンエネルギーが主流となりAIによって飢餓も抑えられると書いてあったけど、個人的にはそんなにうまくいくのかとは思う。(肇)