名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

11文字の檻 (青崎有吾)

『体育館の殺人』をはじめとした論理的な謎解き長編に加え、短編の書き手としても人気を集めてきた青崎有吾。JR福知山線脱線事故を題材にした「加速してゆく」、全面ガラス張りの屋敷で起きた不可能殺人を描く本格推理「噤ヶ森(つぐみがもり)の硝子(ガラス)屋敷」、最強の姉妹を追うロードノベル「恋澤姉妹」、掌編、書き下ろしなど全8編。著者による各話解説も収録した、デビュー10周年記念作品集。

 青崎有吾は僕が個人的に恩を感じている作家である。デビュー作の『体育館の殺人』のおかげで、表紙を描いているイラストレーターの田中寛崇を知ることができたからだ。一時期、彼の絵をデスクトップの背景に使っていたこともある。そして本作の表紙にも彼の絵が使われている。素晴らしきことだ。勿論小説も好きで、『水族館の殺人』と『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』は自室の本棚に並んである。
 本作は作者が各所に発表した短編をまとめたものである。
「加速してゆく」2005年のJR福知山線脱線事故をベースにした話。この中では一番現実的なミステリ。
「噤ヶ森の硝子屋敷」推理小説におけるガラスの建物って4割燃えてる気がする。トリックは予想外かも。
「前髪は空を向いている」『わたモテ』の公式アンソロ。主要キャラのビジュアルくらいしか知らないのでなんとも評価しがたい。
「your name」3ページミステリ。まぁ一発ネタ。
「飽くまで」6ページミステリ。同上。
「クレープまでは終わらせない」巨大ロボの掃除をする女子高生の話。微妙。
「恋澤姉妹」『BLACK LAGOON』のヘンゼルとグレーテルみたいな姉妹が出てくるけれど、ストーリーはあのデストロ246』を彷彿とさせる。
「11文字の檻」設定は一番奇抜だけれど、話の流れは一番まとも。(肇)