名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

時間への王手(マルセル・ティリー)

鉄鋼卸売業者ギュスターヴ・ディウジュは、20年ぶりに再会した旧友からひとりの英国人を紹介される。《過去に働きかけ、起こった事実を変える》研究にいそしむ彼ハーヴィーの手になる装置によって、ディウジュは100年以上前の過去を――ナポレオンが「勝利」したワーテルローの戦場を目撃するが……
古典的幻想文学・SF論「妖精物語からSFへ」でロジェ・カイヨワが言及し、日本では名のみ知られていたタイムトラベルSFの名品、待望の邦訳なる。

 京都の丸善に行ったときに気になっていた本その1(あと2冊あります)。海沿いの街オステンドにふらりとやってきたディヴジュ。彼はオステンドで、旧友アクシダンと英国人ハーヴィーに出合う。二人は「因果関係からの自由」、つまり過去改変を夢見ており、それを実現することができる機械の発明に勤しんでいた。やがて機械が完成し、ワーテルローの戦いを再現することに成功する。しかし再現はできても干渉による過去改変はなかなかうまくいかない。しかしひょんなことから、ワーテルローの勝敗が逆転してしまい……?

と、普段あまり書かないあらすじをずらーっと書いたのには理由がある。
 ネットを漁っていたら、こんなものを見つけた。

da.lib.kobe-u.ac.jp

 本書の訳者でもある岩本和子が書いた紀要論文である。作中で12回も描写される「灯台の三本の光」をベースに、背景となるベルギーの地理や歴史を紹介しながら、本書の魅力を余すことなく伝えている。これには敵わないやと思ってしまい、レビューがまともに書けず、仕方なくあらすじをまとめたというわけである。詳しく知りたい方はこっちを読んでねという誘導記事です。(肇)