名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

マイノリティ・リポート(フィリップ・K・ディック)

プレコグ(予知能力者)の助けを借りて犯罪を取り締まる犯罪予防局が設立され、あらゆる犯罪行為を未然に防ぐことができるようになった。その結果、現実の殺人はこの5年起こっていない。そんなある日、犯罪予防局長官アンダートンが、いつものようにプレコグの予知を分析したカードをチェックしていると、その中に自分が翌週までにある男を殺すというカードを見つける。これは自分を陥れる陰謀に違いない。カードに細工をするには、内部に共犯者が必要だが、それは果たして誰なのか。新しく赴任してきたウィットワー、局の高官でもある妻のリサ、部下のペイジ、それとも…。警察に追われながらも真相に迫っていくアンダートンの前に、突然謎の男が現れる。
トム・クルーズ主演、スピルバーグ監督による映画化原作の表題作ほか、シュワルツェネッガー主演の映画『トータル・リコール』の原作「追憶売ります」など全7篇を収録。

 大学受験前の僕がよく聴いていたアルバムの一つに、UNISON SQUARE GARDENの『Dr. Izzy』があるのだが、そのアルバムの4曲目に、『マイノリティ・リポート(darling, I love you)』という曲がある。正直歌詞の意味はよく分からない(これは田淵が作詞した曲の多くに言えることだ)が、僕の好きな曲である。気になる人は是非聴いてみてね。ちなみに6曲目には『マジョリティ・リポート(darling, I love you)』もあり、こっちは多数派懐古厨のことを歌った曲である(?)。
 田淵が本作を読んだのか、映画を見たのか、はたまた名前だけ借りたのかは知らないが、僕がこの『マイノリティ・リポート』を手に取ったのはこの曲がきっかけである。


 久しぶりにディックを読んだが、表題作の「マイノリティ・リポート」をはじめ、ディックの小説は非常に読みやすい。それでいてアイデアもその魅せ方も非常にうまくて、感心するほかない。
 オススメは「水蜘蛛計画」。宇宙船を救うために、タイムマシンで過去のプレコグ(予知能力者)の元に行き、救助方法を予測してもらおうと画策する移住局の三人。実はプレコグとはSF作家のことで、移住局の三人は「SF小説の内容が論文として扱われ、実現している世界」の住人なのだ。内輪ネタ満載のコメディで、オチもしっかりついている。(肇)