- 作者: 堤抄子
- 出版社/メーカー: エニックス
- 発売日: 2002/06
- メディア: コミック
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隠れた名作。
上では2002年と表示されているが、連載されていたのは1993年から1999年までである。これは復刊ドットコムによって出版された新装版の方を参照しているため。この作品が連載されていたのはGファンタジーで、発行部数の少なさといったらもうそれはそれはもうそれは。
その辺の経緯についてはWikipediaに載っているし、そこのページの分量を見れば、いかにこの作品が愛されているのかがわかるだろう。
しかし、エルナサーガは隠れているのである。作者の堤抄子はエルナサーガの前から、そして今に至るまでずっと漫画をかき続けているのだが、メジャーとは言い難い作家だと言わざるを得ない。確かにそれぞれ作品はほぼ全て面白い。ジャンルも一貫してファンタジーであり、取っつきにくさや難解さとはほとんど縁はない。
ではこの作品の何が悪いのかというと・・・・・・話が進まないのだ。序盤の風呂敷の広げ方は屈指の出来で、「この作品は面白い」と感じさせる威力は非常に高い。終盤の展開や風呂敷のたたみ方も、王道であるがしかしそれゆえに綺麗に構成されている。
エルナサーガを一言で表わすならば、
「理想のみを信じていた主人公が現実を知り変化(成長)する話」
である。そうしたときに、物語の一番の山場がどこに来るかと言えば、その成長や変化のまさにターニングポイントに来ると考えるのは自然な事だろう。そしてそれがエルナサーガの大きなテーマの一つであるという事は、物語序盤から既に提起されている。
ゆえに僕らは、いかに成長するのか、いつそれが起こるのか、そしてその後主人公はどうするのか、の3点を期待する。しかしそしてこの作品は、そのうちの「いかに成長するのか」の比率が非常に大きい。大きすぎる。
おそらく、どこまでえがけば成長した事になるか、が分からなくなってしまったのではないかと考える。原因は主人公の設定と、最初に想定したエピソードや構成・・・ってものすごい根幹から否定してる気がするけど、そんなことないよ!
まとめると、「いかに」をたくさん書きすぎたために、そこから後ろとの分量のバランスが取れなかった事が最大の残念ポイント。
とはいえエルナサーガは名作である。
作者のファンタジー好きっぷりは紙面からひしひしと伝わってくるし。王道といえば王道ファンタジーと言えなくもないが、世界設定とあらすじとキャラ設定が全てかみ合っていて素晴らしい。主役級のキャラクターは何人か登場するが、それぞれちゃんと存在感があり、魅力的である。サブキャラも、なかなか細かいキャラまでそれぞれ信念を持っており、格好良くもある。
展開を引っ張りすぎなのは先に書いたとおりなのだけれど、それがつまらないわけではない。全13巻、どの巻をとっても面白い。1つ1つのエピソードは良くできている。良いキャラクターが良い世界で動くのはやはり面白い。
名作っていたけど、もしかしたら名作じゃないかもしんない。でも駄作って事にすると
「じゃあ、何で復刊したの?」
って事になるし、つーか復刊したのに誰も知らない。ヤバイ。誰にも分からないなんて凄すぎる。
名作じゃないかもしんないけど、隠れた名作であることは間違いない。
とにかく貴様ら、エルナサーガのヤバさをもっと知るべきだと思います。
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