名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

最終兵器彼女(高橋しん)

最終兵器彼女 (3) (ビッグコミックス)

最終兵器彼女 (3) (ビッグコミックス)

あえて私は違う色を出しましょう。それが私のいる意味でしょうよ。

高校生3年、受験生の主人公シュウジの彼女ちせが、自衛隊に連れていかれて最終兵器に改造される。やがて日常の中に戦争の影は濃くなってきて云々、というお話です。
作品を通して、戦争の悲惨さや虚しさといった要素も多分に散りばめられてはいますが、やはり主題は不器用なふたりの恋愛模様なのです。常にそれが芯になっていてぶれない。作者の描きたいものは一目瞭然それなのでしょう。

さて、この作品は各巻の表紙のタッチが毎回違っていたり(だからあえて私の好きな3巻の表紙にしてみました)、ページ構成が組み替えてあったり(目次が本の中頃にあったり)しているといった周到に計算された遊び心に満ちているのも有名です。また、写真をトレースした精緻な背景や、やわらかいタッチの作画にも好感が持てます。

ですが、これはこんな前置きは必要のない作品です。批評は意味を持たず、心に直接語りかけてくる。10回でも20回でも読むたびに味が出るスルメのような作品です。頭で読まずに心で読んでみてください。限りなく直感的に、限りなく共感的に。それがこの作品に一番相応しい読み方だと思います。

等身大のふたりの物語を是非。(坪田)