名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫 SF) (ジョン・スコルジー)

遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫SF)

遠すぎた星 老人と宇宙2 (ハヤカワ文庫SF)

遠すぎた星 老人と宇宙2は75歳以上のおじいちゃん、おばあちゃん達が地球のために地球防衛軍に入隊し、残虐な異星人と戦うという衝撃?の設定の前作老人と宇宙の続編です。
タイトルの老人と宇宙2が微妙にちっちゃく書いてあるのは基本的には世界観を使ってあるだけで(一応老人はたくさん出てきます)主人公は老人ではないからだと思う。

前作はおじいちゃん達正規兵がメインであったが、今回のメインは特殊部隊がメインとなっている。前回のような惑星間のドンパチのさなかにある裏の計画を内密に処理するサイドストーリーのような感じになっていて、あまり派手さはない。

この小説のどこが面白いと聞かれれば主人公の成長だと思う。裏切り者の考えを探るために同じ遺伝子で作られた体に裏切り者の脳の情報を埋め込まれて生まれた主人公だが、記憶を取り出す事ができない。実験は失敗したかと思われたが、特殊部隊の任務をこなしていくうちに少しずつ記憶が・・・とあんまりあらすじ書くとネタバレしすぎるのでここまでにしておく。
どこらへんが成長かといわれれば勝手にででくる頭の中に埋め込まれた父(正確にいうとコピー元)の思想に対しての主人公の葛藤が随所に見られ、苦悩しながらも自我の確立していくというところである。
前作が夫婦の物語とすると今回は父子の物語なのでそういったところにも注目していくとおもしろいかもしれない。

すでに老人と宇宙3は製作は決まっている(すでに発表された?)ので早く邦訳がでるのが待ち遠しい。
(井出)