名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

いち・たす・いち(中田力)

いち・たす・いち (脳の方程式)

いち・たす・いち (脳の方程式)

人の脳がどのようにして心や意識をもつのか。この究極の謎に迫る革命的理論の誕生。脳をめぐる複雑系の諸概念を説明しつつ、脳の作動原理、大脳チップと意識のモデルを提示。頭がガタガタにゆすぶられる知的興奮の1冊。 (内容説明より)

SFではない。サイエンスだけどノンフィクションだから。でも早川の「SFが読みたい」にも、こういう啓蒙書的な本が取り上げられていたりするので、ここで感想書くのもありかなと。
この著者の中田力っていうのは学術的にすごい人らしく、この本では最後にこの人の考えた「渦理論」というものが紹介されている。これは、脳がなぜ意識を持つのかを説明した有力な仮説の一つである。読んでも私の頭ではろくに理解出来ないのだが、仮説とはいえここまで脳の研究が進んでいたという事実に驚きは隠せなかった。
ではその最後に至るまでの過程で書かれているのは何かというと「21世紀のキーワード」。例えば量子力学、バイナリーシステム、エントロピー、ゲームの理論、複雑系、カオス理論、なんかそのへんのそういうの。物好きにとってはとっくに知っているようなことばかりと言えるかもしれないが、斬新な視点とわかりやすい語り口は一読に値する。このあたりハードSFにはしょっちゅう出てくるキーワードだが、正直良くわかってない人はこれ一冊読めば一気に理解が深まるだろう。読めば世界を見る目が変る本である。もし読みたい人いたら貸します。
(條電)