- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1999/04/01
- メディア: 文庫
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『玩具修理者』は短編一本と中編一本で構成されている。一本目の短編は表題作である「玩具修理者」。中編のほうのタイトルは「酔歩する男」だ。前者は特殊な能力の持ち主に玩具と人体を修理してもらう話で、後者はパラレルワールドと量子力学における「波動関数の発散」を元ネタにした時間改変ものだと言ったなら、『紫色のクオリア』を読んだ人ならピンとくるものがあるだろう。
玩具修理者
「玩具修理者」は著者の処女作品であるホラー小説だが完成度はかなり高い。文章は粗いがこれ以降しばしば文体が迷走しだすのでむしろこれくらいがいいという意見もある。主に私の中に。
玩具ならば何でも言われた通りに直してくれるという玩具修理者。主人公である「私」は子供たちの間で噂されるその存在に、壊れてしまった「弟」を直してもらうために会いに行く。
というのがあらすじである。
ストーリーは「私」が弟に対して過去を語るという形式で進み、ラストをほのめかしで終わらせるあたり、作者が好んでいたというクトゥルフ神話作品の影響が見受けられる。
この作品、漫画化と映画化がされているのだが、もし読んでみて気に入ったのならこれらは見ないほうがいいだろう。
酔歩する男
何を書いてもこれと『紫色のクオリア』のネタばれになる気がして、うかつなことが書けないというのは非常に面倒なものがある。どちらもネタがありきの一発勝負なところがあるので難しい。
内容は初めのほうに書いた通りなのだが、先に『紫色のクオリア』を読んだ人に言っておきたいのは、ラノベならああなるけど角川ホラーでやるとこうなるんだぞ、と。
SFとしても結構ガチでハードな感じの作品なので割と皆にお勧めしたい一遍。
ここからは『玩具修理者』ではなく『紫色のクオリア』についての話。ここまでもそうだった気がするけど。
私はこの作者にはあまり詳しくないのだが、この人はもともとSFものが好きらしい。そのせいか作品内にもそれらしいオマージュやらパロディ的なSFガジェットがちょこちょこ出てくる。最後のほうに出てくる「万物理論」とかモロだよね。普通なら「大統一理論」とかでいいはずだし。
某雑誌の書評には以下の本が副読書としてあげられている。
『玩具修理者』
『虎よ!虎よ!』
『万物理論』
『あなたの人生の物語』
amazonへのリンクは邪魔なので貼らないでおくが、『紫色のクオリア』を読んで面白いと思ったのならこれらの本の読んでみるといいんじゃないかと思う。個人的には信者なので『玩具修理者』を特に推すけど。