名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

「しあわせの理由」(グレッグ・イーガン)感想

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

しあわせの理由 (ハヤカワ文庫SF)

本作はグレッグ・イーガンの短編集である。昔順列都市を読もうとして挫折して以来イーガンは敬遠していたのだが、短編は読みやすいという話を聞いたので、手を出してみた。
今回はそのなかの一つ「適切な愛」について軽く感想を書こうと思う。
事故で体がぐちゃぐちゃになってしまった夫を救うために、主人公は夫のクローンを作りそこに彼の脳を移植することとなる。しかし経済的な問題により彼の脳を生かし続ける最適な方法は夫の脳を自分の子宮で育てるという方法しかなかった・・・。
夫の脳を自分に宿すということにより、主人公が他人の脳を自分に宿すという嫌悪感、本能的理解と理性的理解の違いから苦悩するさまがうまく描かれていると思う。イーガンの他の作品に比べるとあまり難しい話ではないので読みやすかったように感じる。同じような題材で小林泰三あたりが書いたらホラーになったりするのかなーという気もしたりしなかったり。
来週以降もしあわせの理由の感想を続けるかもしれません。(ねつ)