- 作者: 木戸実験,かにたまころっけ
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2012/08/18
- メディア: 文庫
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想像してたより面白かった。
確かに作中での設定の説明とか各人の能力の説明が非常にうざったいとか、他国の工作員と敵対しているのに物語が主人公の周り半径五メートルくらいでしか展開されてないせいで非常に世界が狭く感じられるとか、色々とこれダメじゃないの? と思うところがありますし、何よりも「ものすごい仕掛けがあるんですよ」と読者を煽るだけ煽って実のところわざわざあとがきで解説するほどのギミックが使われてないせいで非常にこう「しょっぱい」作品になってますが、それでも壁に投げつけるほどではないと思うんですよね。
いや、でも私が面白いと感じてるところって作品に必要かと言われたら必要ないのか……。頭部だけで生存できる能力者の首から下にぬいぐるみの胴体を縫い付けるとことか、脳内が異世界へ吹き飛んでしまってる猫耳メイドとか。あとヒロインの友人(女)がヒロインに対して告白した後、「友達でいたい」とフラレているのに主人公(男)に惹かれていくヒロインを見ていることしかできないくだりとか、私はものすごい好きなんですけどそれが物語の流れに与えてる影響は殆ど無いですよね……。私が「百合っぽいナニカ」が好きなだけな気が。というかこの作品でまともに掘り下げられてる登場人物がヒロインの友人くらいしかいないので、友人のヒロインへの思いが描かれているところだけ変に浮き上がって目についてるだけかもしれないです。そもそも登場人物が表面的なとこばかり書かれて心情の描写が殆ど無いせいで主人公とかヒロインとかが何を考えて行動してるのかが読者に一切伝わってこないのはダメだと思うんですよ。心が読める登場人物出してるからって問題が解決してるわけじゃないと思うんですよ。
あと気になったのですけど船に乗った時点で銃弾の残りが三発だったのはなにか意味があるんですかね。作中の描写で主人公とヒロインが船に乗ってから二発使用されたことは分かるんですけど、二人死ぬのに銃弾は二発あれば十分ですし、三発残す必要はなかったんじゃないの? と。登場人物に物語の結末は幸福であるべきか否かを語らせている以上何かしらの計算がある気がしますが私には思いつかなかったです。なんでしょうね。
まあ局地的にものすごい面白い(と思った)ところがあるけど全体としてはあんまり……って感じですかね。二・三度読み返す気はないですけど、読むならどこを探しても面白いところのない作品よりははるかにマシですよ。
(葛宮)