名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

ベガーズ・イン・スペイン(ナンシー・クレス)

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

ベガーズ・イン・スペイン (ハヤカワ文庫SF)

「20世紀SF傑作選」を二冊も続けて読み、そのためアンソロに疲れてしまった私をこの小説が癒してくれるかと思いきや、短編集だった。ふむ。
表題作となる中編はしかし、良かった。いわゆる「新人類もの」である。遺伝子改変によって生まれた眠らない人類「無眠人」と、普通の人「有眠人」とのお話。眠らないと言うことは、その時間を別の何かに有効活用出来る。その時間何をしているのかといえば、勉強しているのだ。何故か無眠人は体力に満ち溢れているらしい。受験生にとってはひどく羨ましい話に違いない。誰か一人くらい、勉強も仕事もしないで24時間ずっとネトゲををしている人がいても良いような気がする。いや、あるいは書かれてないだけで存在はしているのかもしれないが。どの道、話にならないだろうな。
「超能力が使える」というわけではなく、「眠らない」という微妙な新人類っぷりによる、普通の人間との確執を描く。両者は当然一つの世界で共に暮らせるはずなのに、案の定とでも言うべきか、有眠人は高い能力を持った無眠人を嫉妬し、対して無眠人は自分の身を守ろうとする。共存か、戦争か。そんな感じの話である。身も蓋もない言い方になってしまったが、面白いから大丈夫。
関係ない話だが、どうもSFの「新人類もの」だの「方程式もの」だの「終末もの」だのと言ったカテゴライズが好きになれない。いや、カテゴライズという言葉はあまり適切ではないし、それがSFを語る際に便利なことこの上ないのは確かなのだが、どうにもむず痒さを感じる。なんか閉鎖的な臭いがするのだよねぇ。
あ、他の短編はそんなに面白くなかったです。(條電)