名大SF研記録ブログ

名古屋大学SF・ミステリ・幻想小説研究会

サンドマン・スリムと天使の街(リチャード・キャドリー)

サンドマン・スリムと天使の街 (ハヤカワ文庫FT)

サンドマン・スリムと天使の街 (ハヤカワ文庫FT)

表紙がどう見てもサスペンス的なあれなのだが、じつはファンタジー。正確にはハードボイルド・アーバン・ファンタジーである。アーバンは都会的の意味ね。さっきググって知った。
内容はといえば、表紙に書いてある強面の男が、魔法を使いつつ銃を街中でぶっぱなし、沢山の人を殴ったり刺したりし、ちょいちょい友人を助けつつ、自分を地獄へ送った魔法使いに対する復讐を成功させるという話である。ファンタジーは最近はあんまり読まないので(多分、たいていの大学生はそうだろうが)、ハードボイルド・ファンタジーというジャンルがメジャーなものかどうかが分からないのだが、個人的には目新しい。最初はあまりにもファンタジーっぽくない雰囲気なので、地獄というのも「地獄のような場所」という意味だと思っていたのだが、文字通りルシファーとかベルゼブブとかアザゼルとかのいる地獄だった。魔法とか錬金術とか天使とかが登場するに連れ、徐々にそのファンタジー分も小説に馴染んでいくのだが、序盤に登場する、その辺をぶらついていた男を殴って気絶させジャンパーや財布を掠め取った後、その辺に転がっている自動車を頂いてしまう男のことを、超一流の魔法使いだと信じろというのに無理がある。おまけに彼は主人公も兼任している。
とりあえずドンパチしているので、爽快な読み物を読みたい人にはおすすめするが、私はこの手の小説につきもののくだらないブラックジョークという奴があまり好きではないので、正直素直に面白いとは言えない。それをくどくどしく連発する主人公もわりと不愉快だった。でもバーの店主はいい人。バーの店主ってのは素敵な人か無口な人か、その両方の人だと相場が決まっているらしい。
(條電)